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[猫ブログ] いろいろな連載と、ときどきお知らせ。

道ばた猫日記

2017年03月14日

葛飾の猫・その1・・・「飼い主のいない猫」

都内葛飾区は、映画「男はつらいよ」や漫画「こち亀」の舞台となった庶民的な風情の地域です。
江戸期の菖蒲(しょうぶ)文化を今に残す菖蒲園からほど近い裏道を歩くと、いたるところで、町猫に出会います。

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あっちにも、こっちにも。
民家の庭で、ひなたぼっこ用座布団をもらっている猫さんも。

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でも、どんな町でも、外猫たちに対する苦情はつきもの。
餌を与えられて、結果的にノラが増えていくことで、住民同士の間での小さなトラブルは、ここでもしょっちゅうでした。

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K地区では、とある借家に住んでいた人が、ノラ猫に情をかけて餌を与え始めて出入り自由にし、増やしてしまったあと、引っ越していきました。
残された猫たちを不憫に思った近所の人たちが餌を与えるうち、猫は24匹にまでふえてしまいます。
さすがに、糞尿の匂いなどで、苦情が出るように。

相談を受け、なんとかしなくちゃと立ち上がったのが、その当時、この地区の自治会の副会長だったK氏。
有志数人と共に「葛飾地域猫の会」、略して「カツネコ」を立ち上げました。昨年4月のことです。

まずは、空き家の大家さんに頼んで、当分このまま猫たちを住まわせてもらうことを了承してもらいました。
そして、猫たちに避妊去勢手術をし、交替で決められた時間に餌やりをすることに。近隣を一軒一軒回って、丁寧に説明し、同意と理解をちゃんと得たうえで、「地域猫」として見守ることにしたのです。
反対する家はなかったといいます。

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ここの猫たちだけを手術しても、舞い込んできた猫が子猫を産むと、また増えてしまいますから、周辺のノラたちにも手術を受けさせました。
その数、去年1年だけで、70匹。

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会員の一人、Oさんは言います。
「とにかく、地域猫や手術に理解のない人とも、けっして話し合いが物別れにならないよう、気を使ってます。なかなか手ごわい人には、丁寧に会の気持ちを綴った『ラブレター』をポストインすることもあります。こちらが一生懸命に『気持ちのいい町づくりのため』と気持ちを伝えれば、すげない人はそうはいません」とのこと。
町に貼るポスターの文言は、猫好きの立場にも、猫嫌いの立場にも、猫の立場にもなって、ソフトに書かれていて、誰も排除していないのがミソです。

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空き家の庭には猫トイレも設置。

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毎日夕方のご飯タイムには、続々と猫たち帰宅。

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カツネコのみなさんは、住民同士のトラブルを防ぐため、よく歩き、よく話しかけ、よく耳を傾けます。
猫で困っているという苦情にも、親身で話を聞きます。
人と猫がうまくいくには、人と人とがうまくいくことが土台だから。
カツネコのみんなは、ただ「猫が好き」というわけではなく、、「地域も、人も、猫も好き」なのです。

昨年は、地元中学校でのバザーにも参加。
今年1月には、地区センターで「地域猫写真展」をするなど、住民への広報活動にも力を入れています。

耳カットをした猫がのんびりとこの町を横切る風景。
でも、その裏には、いろんな人の思惑と、一歩踏み出す勇気と、仲間の輪があったのでした。

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「道ばた猫日記」から書籍が生まれました。

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里山の子、さっちゃん
動物たちはやさしく、気高い。助け合い、ともに生きる猫たちの物語。

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フェリシモ猫部の心温まるブログ、完全版として待望の書籍化!


写真

道ばた猫日記ライター紹介

佐竹 茉莉子(さたけまりこ)

フリーランスのライター。路地や漁村歩きが好き。町々で出会った猫たちと寄り添う人たちとの物語を文と写真で発信している。写真は自己流。著書に『猫との約束』『寄りそう猫』『猫だって……。』『里山の子、さっちゃん』など。朝日新聞WEBサイトsippoにて「猫のいる風景」、辰巳出版WEBサイト「コレカラ」にて「保護犬たちの物語」を連載中。

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カテゴリ: 道ばた猫日記
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みにゃさまのコメント

みんなご飯の心配はないのですね。それだけでも幸せかも・・・でも家ネコになれたらもっと幸せ・・・・考えると切ない気がしますが、保護活動されている方達には頭がさがります。

by ぺったんの母 2017-03-14 17:28

江戸葛飾ならではの人情と地域のみなさんの行動力に頭が下がる思いです。
自治会の方が活動を始めてくれるととても心強いです。ねこたちもみんななんて立派な!「ザ・のら」という風情の子が多いのでしょう。なによりも安心して過ごしている様子がうかがえます。
やはり人の関係がうまくいっているのが大事、というのは基本ですねぇ。
人があったかい「カツネコ」次世代に引き継いで、みんにゃを見守ってください。
2枚目と3枚目のねこは血縁がありそうな顔ですが、なんといっても3枚目の黒多めのニャンず、個性ありすぎ!!(笑笑)鼻がっ!
かっぱちゃんに負けず劣らずの個性ですね。

by あずにゃん 2017-03-14 18:26

(カツネコ)の皆さん、かっこいいです。無責任な人や理解のない人にはつい熱くなって言いたいことを言ってしまいそうですが、そこを敢えて優しい言葉でそんな人をたてて、なんて私には真似できません。言い方は悪いですが、これからもそんな人達をうまく丸め込んで猫の為に活動する人に変えてほしいです。

by ふみちゃん 2017-03-14 20:03

素晴らしい活動ですね(#^.^#)
長く続くよう陰ながら応援させていただきます!

by ミミチロ 2017-03-15 00:01

カツネコさん、素晴らしい活動ですね!!葛飾区でそのような活動が行われていたなんて知らなかったです。佐竹さん、ありがとうございます!
ポスターの文言もいいですね。地域の人々、猫、みんなが気持ちよく過ごせる街づくりされていて本当に素晴らしいですね。
写真の猫たちも力強くてカッコいいですね!

by とも 2017-03-15 07:19

ウチのほうでも、外ねこ保護活動をしております。幸いご近所の方からあたたかく見守られておりますが、もし苦情が出たりしたら、カツネコの皆さんを見習ってがんばろう。ところで佐竹さんの写真展、拝見したいです。情報くださいませ!

by るんたた 2017-03-15 11:26

ただ猫が好き!ではなく 地域も.人も.猫も好き!
とっても心に響く言葉です。
そして活動されている方達の気持ち 思いに優しさを感じます。そう言う思い遣りは 猫ちゃん達の事だけでなく 活動されている1人1人をも 思いやって生まれてくると感じます。

by Hikaru君のママ 2017-03-15 21:54

>ぺったんのお母さま

葛飾在住猫に関しては、「家猫になった方が幸せ」という感じは、私は受けませんでした。
屋根の上で日向ぼっこしたり、いろんな人にかわいがってもらったり、彼らなりのシアワセもあると見受けました。

by 道ばた猫 2017-03-16 01:57

>あずにゃんさん

3枚目の猫さん。あのポーズには笑っちゃいました。1枚目のキジトラさん(♀)も、いい面構えでした。他にもいっぱい個性派猫さんに出会いましたが、載せきれませんでした~

by 道ばた猫 2017-03-16 02:01

>ふみちゃんさん

ふふふ、「丸め込む」って手は、猫活動ですごく大事な気がします。対立しちゃったら、ちっとも猫のためにならないですものね~

by 道ばた猫 2017-03-16 02:04

>ミミチロさん

あのポスターには、本当に感心しました。とてもよく練られた文言だと思います。
猫の代弁もしっかりしてくれていますし。

by 道ばた猫 2017-03-16 02:07

>ともさん

奴ら(笑)、かっこいいでしょ!
外暮らしの猫は五感が発達していて、ヤワじゃありません。

by 道ばた猫 2017-03-16 02:11

>るんたたさん

道ばた猫情報です(笑)。
4月13日~23日まで、長野県飯田市のアートハウスで「里山のさっちゃんと仲間たち」企画展。
4月~7月の千葉・松山庭園美術館の「2017猫ねこ展」に参加。手作りミニブックも販売します。
年内に川口市カフェ・ド・アクタで個展予定。

by 道ばた猫 2017-03-16 02:16

>hikaru君のママさん

同感です! 「ひとも猫も町も好き」という人が、どんどん手を結んで、地元で共生の輪を広げていったら、いいうねりができると確信しました~

by 道ばた猫 2017-03-16 02:19

地域がこうして活動できるのは、素敵な地域の証拠、今は近所同士でも挨拶しない時代、だからお互いを理解できず、ちょっとした事でも拗れてしまうし、その拗れが猫たちへの攻撃に繋がる人もいて難しい中、この地域の人たちは素晴らしい

by 名無し 2017-03-21 18:49

>名無しさん

ほんとうに。猫のことで挨拶や会話が増えたら、ひとり暮らしのお年寄りの方が困っていることとか、異変とかに早く気づいてさしあげることもできますよね。

by 道ばた猫 2017-03-22 23:11