ページ内を移動するためのリンクです。
ここからメインコンテンツです

[猫ブログ] いろいろな連載と、ときどきお知らせ。

ネコノミストの研究室

2017年01月25日

もっと知りたい!「猫の保護団体」について

ネコノミストの北洋祐です。

この連載「ネコノミストの研究室」では「猫と人の共生」を大きなテーマとしながら、動物愛護から最新の猫研究の成果まで、かなり幅広い話題について紹介してきました。

平成29年の記念すべき一発目の記事にあたる今回は、いったん原点に戻る意味も込めまして、「猫の保護活動」についての記事にしたいと思います。タイトルは、「もっと知りたい!「猫の保護団体」について」です。

これまでにも度々触れてきましたが、日本には「飼い主のいない猫」がたくさんいて、そのうち多くの猫たちには新しい飼い主が見つからず、最終的に殺処分という最期を迎えてしまいます。

一方で、このような状況に心を痛め、現状をなんとか変えていきたいという想いを持ち、行動を起こす人もいます。そのような人たちが集まって活動しているのが、今回のテーマである「猫の保護団体」です。

その活動内容はさまざまですが、基本的なものは、殺処分間近な保健所の猫や野良猫の子どもを(メンバーの自宅などで)一時的に保護して、新しい飼い主を探して譲渡する、というものや、野良猫の過剰繁殖防止の活動(不妊去勢手術、TNR)などです。そして、それらの多くは無給のボランティアの活動として行われています。

地域の広報誌や掲示板などに「猫の里親募集」の告知を見たことはありませんか?そうです、その告知を出しているのが、(おそらく)あなたの地域で活動している「猫の保護団体」です。

猫の殺処分を減らしていくうえで、このような保護団体の活動はとても重要で、社会的にもっと注目されるべきだと思うのですが、なにぶん、それぞれの団体は規模が小さく、その活動実態についてのデータもほとんどない。

そこで、私たち三菱UFJリサーチ&コンサルティングでは、猫の保護団体でボランティアとして活動している方々に対してアンケート調査を行いました。以下では、その結果に触れながら、猫の保護団体の実態やこれからの課題について考えてみたいと思います。


ひとつひとつの保護団体はとても小規模


先ほども申しましたが、一つ一つの「猫の保護団体」は、とても小さな規模で活動していることが多いようです。ほとんどは特定の「地域」に根付いて活動をしていて、少数の熱心なボランティアさんを中心に、地域の仲間が集まってグループを作っています。

アンケートによれば、団体の人数は10人に満たないところが6割を超えていました。

図1:保護団体のメンバーの人数

170125 (1).jpg

そして、これら少人数の団体が、それぞれどのくらいの数の猫を保護・譲渡しているのかと言うと、以下のグラフのような状況です。譲渡数15匹以下の団体が全体の65%くらいといったところです。

図2:1年間の平均的な譲渡数

170125 (2).jpg

私もいくつかの猫の保護団体さんとご縁がありますが、皆さん精力的かつ愛情深い方で、本当に頭が下がる思いです。一方で、猫の保護団体は、(世の中のあらゆる団体がそうであるように、)その活動に様々な課題を抱えているのも事実のようです。特に、猫の保護活動にはたくさんの手間と費用がかかり、それを無給のボランティアさんの手だけで支えていくのはとても大変なことです。


猫の保護団体が抱える課題


アンケートの中で、それぞれの保護団体が直面する課題について尋ねた結果が以下のグラフです。

図3:猫の保護団体が直面している課題(複数選択)

170125 (3).jpg

これを見ると、「活動資金の不足」に悩む団体が全体の6割近くで、最も深刻な課題となっていることがわかります。

この「活動費用」に関しては、それぞれの団体が工夫しながらお金を工面し、足りない分は代表者やメンバーが自己負担している、というのが実態のようで、アンケートでは、毎月数万円以上の自己負担をしているボランティアさんも少なくないことがわかりました。

図4:保護団体のボランティア1人が1カ月に負担する費用

170125 (4).jpg

これは私の個人的な意見ですが、団体の代表者やメンバーの自己負担が大きくなってしまうと、活動そのものの持続性に問題が生じるように思うのです。

日本において、猫の保護活動を活発化していくためには、猫の保護団体やボランティアの自己負担をできるだけ減らして、活動しやすい環境を作っていく必要があるのだと思います。

ちなみに、以下のグラフは保護団体が金銭や物資の支援を受けている協力先について示したものです。

図5:金銭や物資の支援を受けている協力先(複数選択)

170125 (5).jpg

これを見ると、今のところ、全体の85%くらいの団体は外部からなんらかの資金や物資の支援を受けているようですが、その多くは特定の「個人」からの寄付であって、企業や行政等からの支援を受けているケースはかなり少ないことがわかります。だからこそ、十分な資金が集まらず、代表者やメンバーの自己負担が大きくなってしまうのかもしれません。

でも、小規模なボランティアグループが、協賛を募るなどして外部から活動資金を獲得していくことは、あまり現実的ではないような気もします。


小さな保護団体が活動しやすい環境を


猫の殺処分を減らしていくためには、猫の保護団体の活動がカギを握っていて、でも、その保護団体はひとつひとつが組織として小さいために、資金面などで多くの課題を抱えている。

これが、猫の保護団体について、今のところ私が考えている問題意識です。

でも、だからといって、保護団体の組織の規模を大きくして効率化していくという方向性は、日本には馴染まないような気もしています。どちらかというと、「小さな保護団体が、小さなままでも活動しやすくなる」という方向性が合っているのではないかと。

猫の保護団体に対する社会的な関心が高まって、もっと多くの人や企業等がその活動に対して支援を行っていく。そして、そうやって集まった支援が、小規模な団体にまで行き渡るような仕組みができていく。

そんな未来が訪れることを期待したいと思います。そして、そんな未来の実現に、私たちも少しでも力になれればと思っています。

北洋祐
※ツイッター(@kitayooo

(参考)アンケートの実施概要
【調査目的】
猫の保護活動に取り組むグループや個人の、活動の実態と課題を把握する
【調査対象】
グループや個人で猫の保護活動を行うボランティアの方々。(保健所等の行政職員やNPOの有給職員は含まない)
【回答者数】
235名
【調査時期】
2016年2月
【調査方法】
WEB上でのモニターアンケート(WEB調査会社「楽天リサーチ」の登録モニターの中から3万人を無作為に抽出し、該当者をスクリーニングした後、WEB上でアンケートを実施)
【調査主体】
三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「人と動物の共生」研究チーム 



ネコノミストの研究室ブログライター紹介

写真

北 洋祐

京都大学経済学部卒業。三菱UFJリサーチ&コンサルティングの研究員として、中小企業政策、スタートアップ企業政策の研究に従事。一匹の野良猫を保護して飼い始めたことをきっかけに猫派となり、それ以来ライフワークとして動物愛護分野の研究にも勤しむ。2016年からは、人と猫の望ましい関係について考え発信する「ネコノミスト」として活動。現在は元野良猫のシンスケと保護団体から譲り受けたゴマの2匹とともに暮らす。好きな猫マンガは伊藤潤二『よん&むー』

写真

武井 泉

市立高崎経済大、東京大学大学院卒業。独立行政法人の研究所等を経て2007年より三菱UFJリサーチ&コンサルティングに入社。アジア・アフリカの国際協力事業(農村開発、社会保障等)や、ハラール市場についての業績多数。2015年より、ネコの幸せと人との共生を考える「ネコノミスト」としても活動を開始。現在、5歳の2匹の元保護猫と暮らす。これまで一緒に暮らした猫は40匹以上にのぼる。趣味は、園芸と、海外出張の合間のネコ撮影、ネコグッズの収集。

この記事を気に入ったらいいね! してニャ

  • ツイート
  • いいね!

みにゃさまのコメント

猫のぼらんてぃあ団体といっても団体と言う程の規模ではないのがよくわかります。みなさん仕事をもちながらの活動ですし大きな団体になること自体が難しい現実です。
大坂地域ねこネットワークやねりまねこさんのように市とうまく連携していくところ、またはねこけんさんのように不妊手術無料病院を掲げクラウドファンディングで注目されメディアにも訴えている団体さんもあるようですね。
少しづつですが、だんだん地域ねこやTNR活動が一般の方々の耳にも入るようにはなってきたようですね。猫団体が横の連携をしてネットワークをつくっていけると活動にも幅がひろがるのかなあ~なんておもったりもしますが・・・各々の意見や目指す方向が同じとは限らないことも。
みんな根っこは「猫を助けたい」というシンプルなことなんですけどね。
できることには手助けし、明るい未来を作りたいものです。

by あずにゃん 2017-01-25 13:08

うちの子は個人ボランティアさんから譲渡させて頂いた子です。
その方は仕事をして、終わった後パートに出てまでして、保護活動を続けてらっしゃいます。
そういう個人ボランティアさんも沢山いらっしゃいます。
 まず行政に動いて貰い、身銭を削ってまで活動されてる個人ボランティアさんにも、補助金やさくらねこ用の無料チケット配布等、増やして欲しいです。
何より、全国的に、殺処分から里親探しへとセンターが変わることを願ってます。

by zero19641213 2017-01-25 15:39

みんな根っこは「猫を助けたい」というシンプルなこと・・・
それは良くわかるのですが、
ボランティアしてます、皆さん寄付お願いします!は、いかがなものかと思います。
ボランティアと言うのは、もともと自分の出来うる範囲で行うもの。
その限度を超え、あげく、助けてください!が多すぎるように思われます。
結局は、その甘さが、更なる多頭飼い崩壊を起こしているケースも多々見受けられる昨今です。
私は今現在4匹の猫と暮しています。
すべて捨てられていた子や、飼育放棄された子です。
一人暮らし故、経済的には、かなり苦しい、これが本音です。
だから、これ以上は無理だと、ちゃんと自覚しております。
その自覚のないまま、かわいそうだからと保護し、
多頭飼い崩壊して、さらに悲酸な目に遭う猫たちを増やす。
そのような方たちがいるのも事実です。
支援されるのを、当たり前と思われたら困ります。

by ちょっと言いたい! 2017-01-28 06:06

保護団体に所属している者です、初めまして。
多忙な中をぬって譲渡会でお手伝いをしてもらったり、多くはないお給料から寄付してもらっている方達のお陰でようやく運営できています。
現実、人間も動物も育てるのにコストが、お金が必要ななんですよね…。
善意に甘えないように心して活動していますが、人手・資金不足の一事情として保護したのはいいけれど自ら譲渡会に参加したり、保護せずにボランティアの方や団体に丸投げしようとする人がいたり、時期によっては保護ができない事もあり、断る事もありますが中には施設に捨てるというケースも何度もあり(月に1度位あるかどうかの割合で)資金不足に陥るという事情故に寄付をお願いせざるを得ない事情があります。
この悪循環を断ち切る為に日々試行錯誤しています。所属している身として考えなければならないですね。

by ばんくろった 2017-07-21 23:02