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[猫ブログ] いろいろな連載と、ときどきお知らせ。

道ばた猫日記

2016年10月18日

信州の猫館長さんその1・・・・一茶記念館のうみちゃん

長野県信濃町は、江戸期の俳人小林一茶の生まれ育った村。晩年も江戸を引き払って故郷で過ごしました。
一茶は、動物の句をたくさん詠んでいますが、猫の句も300をゆうに超える猫好きです。

安曇野に住む友人夫妻を訪ねた秋の一日、信濃町にある「一茶記念館」に立ち寄りました。

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迎えてくれたのは、なんとも味のある濃い三毛さん。噂に聞く猫館長、うみちゃんです。
「事務室に用があるから、ちょっと待っててね」
そう言い置くようなそぶりで、事務室へ足早に入っていったうみちゃん。
また出てくるのを、ロビーでそわそわ待っていたら、
受付の女性が「猫館長は、いま、館長(ニンゲンの)と一緒にお弁当を食べてます。よかったら、ごらんになります?」と、親切に中へ招いてくださいました。

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うみちゃん、やさしそうな館長さんのお弁当をのぞき込み、牛肉を少しばかりおねだりしているところでした。
「ハハハ、牛肉わけてるとこ撮られちゃうと、飼い主さんに叱られちゃうかな」って、館長さん。
えっ、うみちゃんは館の猫ではないのですか?
「通いの公認猫館長なんですよ。すぐ近くの自宅から、毎朝出勤してきます。遅くたってスタッフのランチタイムに間に合うようにやってきます」

聞けば、うみちゃんは、きょうだいのそら君と一緒に近所のおうちにもらわれてきた子。
7年前から、そら君と連れだって、毎日、記念館に遊びに来るようになり、そら君は初代猫館長に。

ところが、ある日、そら君は出奔。
その後もひとりでせっせと通ってくるうみちゃんが、2代目猫館長としてお役目を引き継いだのでした。

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お待たせ。じゃあ、2階を案内してあげるから、ついてらっしゃい。
そう誘われた気がして、うみちゃんについて階段を上っていくと・・・。

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そこは、里が一望できるガラス張りのスペース。
山麓にコスモスが咲き乱れ、畑の野焼きの煙があちこちで立ちのぼっていて、信州らしい秋景色です。
真正面が、黒姫山。信州富士とも呼ばれる姿の美しい山です。

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黒姫伝説という悲話が伝わる黒姫山を見つめる猫館長、絵になります。

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一緒にしばし里を眺め、1階へおりるや、うみちゃん、再び、足早に事務所へ。
あれ、うみちゃん、また館長さんからご飯もらってる! 今度は猫缶です。

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よくみると、館長席(ニンゲンの)そばには、猫食堂のほか、爪とぎも完備。いい待遇ですね~。
気持ちのよいこの季節は、外の見回りにも熱心に出歩くのだそう。夏は、クーラーのきいた館内で、日がなまったり過ごすのだとか。
冬は、1メートル50センチもの積雪がある土地なので、長い自宅待機となります。
が、雪解けと共に、張り切って通勤してくるうみちゃんなのでした。
けっして猫好きではなかったという館長さんですが、いまはうみちゃんにかなり「ぞっこん」と、お見受けしました。

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ランチタイムの後は、ポット脇のあたたかな専用席でうつらうつら。午後の接客や見回りの勤務に備えます。

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この4月から、市の派遣職員として記念館勤務になったという女性係長の長安さんは、「ここで一番の猫好きは私です!」と胸を張ります。
家でも4匹猫を飼っています。
「職場にきても猫がいるなんて、私にとっては天国(笑)でした。毎日が幸せです」

館にいるときのうみちゃんのご飯やおやつ代は、館長・学芸員・係長の3人で折半しているそうです。
5時の閉館時間になっても、寝入っていたりしてうみちゃんが帰りそうにない時があります。そんなときは、おうちの方が迎えに来たり、館の職員が抱っこして届けることもあれば、帰宅ついでに車で届けることも。

館に通じる道には、コスモスが風に揺れて、こんな看板が立っています。
どれほど猫館長が記念館や地元に愛されているか、よくわかりますね。
そうそう、今発売中の「猫びより」にも、うみちゃんが紹介されているそうですよ。

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猫好きの来館者もたくさんいますが、うみちゃんを追いかけまわすことはなく、不在でも「あ、今日はいないのね~ 見回りかな」と、ちゃんと理解してくださっています。
人にとっても猫にとっても、なんとも居心地のよい一茶記念館。
信州ならではの、人と猫ののどかな共存がここにはありました。
もちろん、一茶関連の展示も見やすくて充実しています。(展示室には猫館長は入りません)

私の好きな一茶の句を2つ。
猫の子のちょいと押さえる落ち葉かな
猫の子の命日をとぶ小てふ(蝶)哉(かな)

生きとし生ける小さな命を愛でた一茶さん。猫の命日を覚えている一茶さん。すてきです。
ここに来れば、一茶さんと時空を超えて心が通いますよ~

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【一茶記念館】
長野県上水内郡信濃町柏原2437-2
開館時間:3月20日~11月30日の9:00~17:00
(12月~3月19日までは、年末年始を除き見学可能。ただし土日祝日要予約)
入館料:大人500円


写真

道ばた猫日記ライター紹介

佐竹 茉莉子(さたけまりこ)

フリーランスのライター。路地や漁村歩きが好き。町々で出会った猫たちと寄り添う人たちとの物語を文と写真で発信している。写真は自己流。著書に『猫との約束』『寄りそう猫』『猫だって……。』『里山の子、さっちゃん』など。朝日新聞WEBサイトsippoにて「猫のいる風景」、辰巳出版WEBサイト「コレカラ」にて「保護犬たちの物語」を連載中。

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カテゴリ: 道ばた猫日記
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みにゃさまのコメント

小林一茶は私も大好きです。カエルや雀といった、小さな命に対する優しさや思いやりがあふれていて、とても癒されます。うみちゃん、何とも言えないあじわいのある三毛さんですね。人間が愛さずにいられなくなる、不思議な力があるみたいですね。近くなら、ぜひ会いたいのですが、残念です。ちなみに私は一茶の(やせがえる、負けるな一茶ここにあり)が大好きです。(ちゃちゃ子も早いもので、間もなく避妊の時期になります。最近は子猫のあどけない顔から少し大人の顔になってきました。びびりなのに、気がつくと膝に乗っているようなおもしろい子です。

by ふみちゃん 2016-10-18 15:17

うみちゃん猫びよりで拝見しましたよ。本当に自由気ままで、自然体で、しかもちゃんとお仕事している!言うことなしですね。猫横断注意!の看板、私の住んでいる地域にもあるのです。粋な計らいですね。職場にニャンコがいるの最高ですね。
あたしの家族のちゃい子がお空に旅立ったのですね。TV放映のあとの字幕にショックを受けました。悲しいです・・・。この場をお借りして心からお悔やみ申し上げます。

by ぺったんの母 2016-10-18 15:51

今回もしあわせ猫ちゃんを紹介して頂き有難うございます。茶太郎ちゃんのその後も楽しみにしています。ちゃい子ちゃんが突然亡くなった事は私も悲しいです。ブロクで紹介された猫ちゃんがBSで放送されるので楽しみにして観たのですが・・・。ちゃい子ちゃん、以前のブログの時よりひどく痩せていて番組の最後のテロップで亡くなったと報告がありショックでした。一緒に過ごしてこられた主様やエッピョンの悲しみを思うと心が痛くなります。きっと、ちゃい子ちゃんは天国で直美さんやエッピョンを見守っているでしょう・・・・。ご冥福をお祈りします。

by 山猫 2016-10-18 16:27

数年前に猫館長に会いたくて一茶記念館に行きましたが、その時はお出掛け中ということで会えませんでした。また行ってみようと思います。

by ながお 2016-10-18 21:58

>ふみちゃんさん

こんなふうに、いいかたちで猫が迎えてくれる施設が増えていったら楽しいし、猫を飼えない子どもたちも触れあえていいのになあ~~と思います。ちゃちゃ子ちゃんの成長、楽しみですね!

by 道ばた猫 2016-10-20 01:44

>ぺったんのお母さま

ちゃい子ちゃんは、放映の前日に亡くなったのです。肝臓の病気で闘病中でした。私が出会った時は、瞳がキラキラして走り回ってました。直美さんと、お兄ちゃんのエッピョンと、大の仲良し家族でした。安らかに。

by 道ばた猫 2016-10-20 02:10

>山猫さん

ちゃい子ちゃんは、ノラ母さんのお産の時、直美さんに自宅でとりあげてもらってから、きょうだいのエッピョンと一緒に11年以上暮らせて、幸せな子でした。山猫さんの言う通り、空からいつも見守っていると思います。

by 道ばた猫 2016-10-20 02:16

>ながおさん

うみちゃんに会えなくて残念でしたね。
毎日、スタッフのお弁当チェックは絶対に欠かさないので、お昼前に行くと会える確率高いそうですよ~

by 道ばた猫 2016-10-20 02:19