ページ内を移動するためのリンクです。
ここからメインコンテンツです

[猫ブログ] いろいろな連載と、ときどきお知らせ。

道ばた猫日記

2016年07月12日

旅の途中・・・その④「帰れない喫茶店」

東海への日帰り旅の途中、静岡で「なかなか帰れない喫茶店」に出遭いました。
駅から6~7分の裏通りの角にある「みよ志」という名の喫茶店です。

帰れないというのは、居心地がよくておいしいというだけではありません。

michibarta20160712-1.jpg

こんな子がいるし、

michibarta20160712-2.jpg

こんな子もいるしで、ついつい時間を忘れてしまったのでした。
私の後に入ってきた若い女性客は「以前、この店の前を時に通った時に気になって気になって仕方なかったけど、やっと念願かなって来られた」という初めてのお客さん。
愛猫を亡くして一年近く猫を触ったことがないといいます。
なぜ通った時に気になったのかというと・・・。

michibarta20160712-3.jpg

通りに面した角はガラスの出窓になっていて、ふと窓に目をやった人は「えっ、えっ? 置物? ナマ猫?」と2度見をしてしまうのです。
通勤の通り道になっている人は「タマちゃん」とか「ボス」とか、好き勝手に声を掛けていきます。もう町の風物詩と言っていいガラス窓の光景なのです。
ちなみに、上の写真には、ナマ猫が2匹と置物が2匹います。下の写真は、どちらかが本物だそうですよ。

michibarta20160712-4.jpg

「みよ志」というのは古風な名前ですが、10年前までご両親が営んでいた寿司店の名前をそのままに、改装して喫茶店にしたのだとか。町に根付いてる感じで、いい名前ですね。

マスターは、とくに猫好きというわけではなかったそうですが、5年前、ふと猫が飼いたい気分の時に、「保護猫できょうだいはみんな貰い手がついたのに、1匹だけ貰い手がなく、もう6か月くらいになっちゃったから、おうちが見つかるのは無理かな」という子猫の話をお客さんを介して耳にし、もらうことにしたのでした。
やってきたのは、人見知りで、鼻周りの模様が面白い白黒の男の子。
「初めての猫飼いの人には、この子を懐かせるには苦労するかも」と言われたのに、「ミッツ」と名づけたその子は、その夜グルグル言いながら布団の中に入ってきました。

その翌年。人目につかない山道で弱っていたオスの子猫をサイクリング中の人(ミッツのきょうだいをもらった人でした)が見つけたのを引き取りました。
「ぽんたと名づけたものの、助からないかも、と思ってました。弱々しく鳴く声が『助けて、助けて~』と言ってるみたいだった」と、オーナー。
やってきて2日目に、ぽんたはミッツの懐に飛び込んでいきました。ミッツはびっくりして弾き飛ばしたそうですが、すぐに子猫を受け入れました。お尻を舐めてやるほどの可愛がりようで面倒を見ました。

michibarta20160712-5.jpg

ぽんたがどんどん大きくなっても、2匹は大の仲良し。

michibarta20160712-6.jpg

その翌年・・・。
お母さんに「2匹以上は絶対だめ!」と言われていたマスターは、すぐ近くのお店の横の隙間にはさまるようにうずくまっている痩せこけた三毛の子猫を見つけます。
翌日は嵐の予報。あの様子じゃ、あの子は死んじゃうだろうなあ・・・。そう思うと、放ってはおけず、なかなか捕まらない子猫を何時間も粘って、水を飲んでいるすきに素手で保護しました。
「濃い三毛は、いまどき貴重だよ」というお客さんがフォローしてくれたおかげで、お母さんも「しようがないわね」と折れました。

michibarta20160712-7.jpg

「ハナ」と名づけた女の子を、それはそれは大事に育てたのは、ぽんたです。
ぽんたがハナに注ぐ愛が母親的なら、ミッツの愛は父親的。
知らない人が見たら、まるで父猫、母猫、子猫の図のようです。

michibarta20160712-8.jpg

そしてまた。2年後、立て続けに子猫を2匹保護する羽目になったマスター。猫神さまに見込まれましたね。
1匹は、裏口に「よかったら飼い主さんをさがしてあげてください」と書かれた箱で捨てられていた子猫。貰い手が見つかり、ホッとしてまもなく、雨上がりに店の前でリード付きで日向ぼっこをしていたミッツの元へにゃあにゃあ鳴いて寄ってきた子猫がいました。
「魔がさして、つかんじゃった(笑)。」と、マスター。この子はお客さんがもらってくれました。

子猫騒動は、これで終わりではありませんでした。
1年後の、おととし。近場をうろつていた子猫2匹を見かねて保護し、里親を見つけようと思ったものの、先住猫との相性が悪くて戻されたり、おしっこ癖が悪かったりで、なかなかおうちが見つからず、大きくなってしまいました。
「もうよそにはやれなくなってね。5匹以上は絶対に絶対にダメ!が、母との約束です」

この2匹、茶白のイチローと、キジ白のジローも、ぽんたが養育係を務めました。

michibarta20160712-9.jpg

ポンタを見習って、トイレの使い方も覚えました。

「ハナはめったに2階から下りてきませんが、オス猫4匹はけっこう店に出てくるので、猫好きのお客さんが増えましたね。前を通る人の話し声も聞こえてくるんですが、タマちゃんとかボスとか、皆さん、好きな名前で呼んでいるお気に入りがそれぞれいるみたいです。散歩の犬ものぞいていきます」とマスターのお話。「もう年で飼えないけど、ここに来たら猫に会える」と喜んでくださる年配客や、「癒されるんだなあ」とひと息つくサラリーマンの客も多い。

michibarta20160712-10.jpg

万人に人気は、ぽんたくんのよう。ちょっと困った顔で、5歳のおじさんなのに無邪気そのものの、ムーミンみたいな不思議キャラクター。
カウンターでイチゴの箱に入っていたり、お客さんのスカートに潜ってしまったり。

michibarta20160712-11-12.jpg

ミッツは、ボスの自覚充分で、いつも四方八方見回りしては外敵からみんなを守る体制です。朝の5時と夕方の5時を食事タイムと決めて、自分を律するオトコでもあります。それに比べ、ぽんたは、あれば四六時中食べまくるオトコ。
イチローとジローは、まだまだこの2匹の保護下という感じ。
5年で次々猫が増えていったのに、ここの猫社会がとてもうまくいっているのは、やはり、最初の保護猫でボスたるミッツの懐の深さと賢さによるところが大きいのかもしれません。「順番がよかった」と、マスターも言います。 イチローは、子猫の時からの粗相癖がなおらず、マスターを悩ませます。餌代だってかかります。でも、マスターは言います。
「自分が5匹飼いになるなんて思ってもいませんでしたねえ。これ以上は増やせないという思いと、見捨てられないという思いの、葛藤ですよね。やっぱり5匹もいると、否応なしに生活が変わります。おしっこをする子もいるし、わざとグラスを落とす子もいるし。だけど、それぞれに無条件に可愛いし、励まされて暮らしている気がして、安らぎます。結局、猫たちは猫という意識より家族ということ。健康で元気でイタズラしてくれる普通の日々に、幸せを感じてます」

michibarta20160712-13.jpg

ああ、そうか。ミッツ以前にマスターの懐が深かったのでした。もしかしたら、猫たちによって、より深くなっていった懐なのかもしれません。そして、ダメ!と言いながらも受け入れてくださったお母さんも懐の深いかた。愛情って、人も猫も循環するのだな、と改めて感じ入りました。

「どうしよう、帰れない~」と、何度もつぶやいていた、猫を触るのが1年ぶりのお客さんが帰った後も、4匹が入れ代わり立ち代わり「遊ぼうよ」と誘うので帰れない私。
そのうち、仕事帰りの猫好きのお客さんと話が弾んで、いっそう帰れない。
「3時間、4時間のお客さん、ざらですから」と笑顔でマスター。

帰れない店、みよ志で、旅の途中の夏の日は暮れゆくのでした。

michibarta20160712-14.jpg

みよ志・・・静岡県静岡市駿河区稲川1-3-24
月曜~土曜日 15時~24時


写真

道ばた猫日記ライター紹介

佐竹 茉莉子(さたけまりこ)

フリーランスのライター。路地や漁村歩きが好き。町々で出会った猫たちと寄り添う人たちとの物語を文と写真で発信している。写真は自己流。著書に『猫との約束』『寄りそう猫』『猫だって……。』『里山の子、さっちゃん』など。朝日新聞WEBサイトsippoにて「猫のいる風景」、辰巳出版WEBサイト「コレカラ」にて「保護犬たちの物語」を連載中。

Instagram

カテゴリ: 道ばた猫日記
  • ツイート
  • いいね!

みにゃさまのコメント

猫の神様はマスターの人柄を信じてくれて、沢山の子達を託してくれたんだと思います。私もこのお店なら、帰れなくなること間違いありません。佐竹さん✨聞いて下さい!娘の勤務する病院にそらにそっくりな子が保護されて来ました。娘は完全に一目惚れで、なんの迷いもなく引き取りました。生後約一ヶ月半のその女の子は保護主さんの庭先に近所のボス猫と現れ、ボスがこいつを宜しくと言わんばかりに預けていったそうです。いま、(ちゃちゃ子)と名付けられ、人間のママと幸せに暮らしています。きっと天国のお兄ちゃんも可愛い妹を見守ってくれると思います。

by ふみちゃん 2016-07-12 17:45

猫神さまに見込まれたマスター素敵ですね‼ にゃん達が幸せに暮らしていてほっこりしました~(///∇///) 伺ってみたいけど…静岡は遠いなぁ~(>_<)

by あるとはは 2016-07-12 17:54

何か切ないような顔をした「ポン太君」、味のある表情がたまりませんね~♪ ( *´艸`)
美猫じゃなくても、忘れられない程に
人の心を鷲掴みにする猫って、結構いますよね! (*´ω`)

by 紅お蝶 2016-07-12 22:49

毎週、道ばた猫日記を読むのが楽しみです。
うちの子もお顔の模様が個性的な白黒オスなので、ミッツ君に親近感です。うちの娘たちは、むしろこの柄がカワイイんだと言ってます。分かってる(笑)
みよ志、素敵なお店ですね。

by ふ〜みん 2016-07-12 23:00

>ふみちゃんさん

やっぱり、思わぬ時に運命の子がやってきましたね! そら君にそっくりな女の子を連れてきてくれたボスも、いい奴だ~。そら君の分も仲よく大事にしてやってください!

by 道ばた猫 2016-07-13 11:48

>あるとははさん

いつかもし静岡通りかかることあればぜひ。
オムライスやナポリタンが人気のようです。マスターのお人柄もあり、なじみ客はいい感じの人ばかりです。

by 道ばた猫 2016-07-13 11:52

>紅お蝶さん

そうなんです。ぽんたくんのペーソスある表情、たまりませんね! ミッツ君のほうもシュッとしたいいオトコで、サラリーマン客に「あんな風に堂々としていられたらなあ」と人気だそうですよ。新参2匹はこれからが楽しみです。

by 道ばた猫 2016-07-13 11:55

>ふーみんさん

うちの9歳になるケンジも、ミッツによく似た白黒で、保護猫きょうだいの売れ残りで、独特の可愛さです。ふーみんさんちのお嬢さんたち、わかってますね!!

by 道ばた猫 2016-07-13 11:59

これは帰れなくなりますね!
我が家も、保護したのは私、人間だけど、育てたのは、先住猫たちです。
ボス猫のおかげで、雄だらけでも、みーんな仲良しですよ。
多頭飼いは、それぞれの個性がより一層際立つから面白いですね~。

by ちぃこ 2016-07-13 12:07

また素敵なお店が! ぽんたくんのお顔は味がありすぎで何度も見たくなる。。キリっとしたミッツくんもかっこいい。こんなお店が近所にあったら楽しいだろうなぁ

by さりゅ 2016-07-13 18:51

>ちぃこさん

やっぱりボスが賢くてやさしいと、多頭飼いでもうまくいくんですね!
紅一点のハナちゃんはミッツが大好きなんですが、ミッツはデレデレされるのが苦手で、ときどき追い払っているそうです(笑)。

by 道ばた猫 2016-07-13 23:50

>さりゅさん

ぽんたくんは、あとをひくオトコですよね(笑)。
マスターは、童心を失わない彼を「ピーターパンのような男」と言ってました~

by 道ばた猫 2016-07-13 23:53

人が猫を選ぶのではニャイ!猫(我々)が、人間を選んでいるのニャア!
↑‥と言う話しの見本の様なお話しですね。
猫神様も、『こにょ人にゃら大丈夫だよ。行ってらっしゃい』と送り出しているのかも…

きっと、そうです(=^・^=)

私も近くに、あったら絶対に行きます!
そして、帰れなくニャル?W(^O^)W

by まるっと猫 2016-07-14 02:29

>まるっと猫さん

猫ってすごい嗅覚ですよね~ 。同じ駿河区のある地区では、4年前の静岡市の「地域猫の協働パイロット事業」の呼びかけに自治会が手をあげ、ノラを地域猫としてみんなでお世話を続けているそうです。人も猫も住みやすい町が広がるといいですね~

by 道ばた猫 2016-07-15 00:03