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[猫ブログ] いろいろな連載と、ときどきお知らせ。

道ばた猫日記

2016年06月14日

命をつなぐ・・・・その④「たろとまろ」

新婚ほやほやの千尋(ちひろ)さんの家には、2匹のきょうだい猫がいます。独身時代から一緒に過ごしてきて、6年がたとうとしています。

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お兄ちゃんのたろくん。
お鼻周りの模様がとってもユニークな白黒さんです。

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妹のまろちゃん。
用心深くビビリで、お客さんが来るとどこかに隠れて姿を消します。まろちゃんが用心深いのは無理もなく、ほとんど目が見えていないのです。

千尋さんと2匹との出会いは、ちょうど6年前の「動物生命尊重の会(アリスの会)」の譲渡会がきっかけでした。引っ越したのを機会に「猫を飼いたいな」と訪れた譲渡会会場で、スタッフから「保護仔猫の預かり親をしませんか」と打診されたのです。 (譲渡会では、「独身」「持ち家でない」などの方への正式譲渡は基本的にしていません。引越し、結婚、出産などで、本人の意思にかかわらず飼えなくなるケースがままあるからです)
預かり親を打診されたのは、千尋さんの誠実な人柄を見抜いてのことだったに違いありません。
ただし、子猫2匹は「入院中」で、会場には来ていませんでした。写真を見せられて、千尋さんは、預かり親をすることに決めました。

生後間もなく捨てられていた2匹を保護した時の「アリスの会」のスタッフブログの一部をここにご紹介します。
2010年6月。「あまりにも衝撃的な仔猫」というタイトルです。
『何が起こっているのかわからないほどの衝撃でした。そばには、1匹の仔猫が行き倒れてすでに亡くなっていました。 (黒猫は)こんなになっても(眼球がないように見えた)、小さな声でシャーと威嚇しましたが、衰弱のため動けません。 この子(白黒)の目もぴったりくっつき眼球は見えません。2匹とも助かっても全盲になってしまうだろうとの診断でした」
闇の世界で身を寄せ合っていた兄妹、どんなに怖ろしく不安だったでしょうか。でも、アリスの会の「助かって」という祈りと、 動物病院の懸命な手当のおかげで、2匹はいのちをつなぎました。たろくんの目は大丈夫でした。まろちゃんのほうは、 膜が目にぴったりとはりつき、「全盲に近い」状態で生きていくことになりました。でも、スタッフの家は保護猫が満杯で、 退院後の里親もしくは預かり先を探していたのでした。

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手当てを終えて、体力も回復し、千尋さんの家にやってきた日の兄妹。
「たろは3日でなついたけれど、まろは、近づくと逃げるし、呼んでも返事は『シャ~」でした」と、千尋さん。
全盲の猫について本やネットなどで調べて、いろいろ覚悟をして迎えたといいます。
「家具の配置は変えないとか、脱走予防は厳重にとか、水をためておかないとか・・・、気をつけなければならないことはいくつもありました。 でも、飼ってみれば、まろはたろとさして変わりなく、ごくふつうの猫として日々を送っています」

自分に足りない能力を他の五感をフルに使って補完する動物本来の「生きるチカラ」もあるでしょう。 「足りない」と感じるのは人間だけであって、動物には「自分のままに過不足などなく生きている」だけなのかもしれません。
そして、そばにお兄ちゃんがいたことが、幼いまろちゃんにとって、とても心強いことでした。
まろちゃんは、持ち前の好奇心で、どこへでも探検にでかけます。でも、行く手に障害物があったり、「ここはどこ?」状態になると 立ち往生してしまい、不安な鳴き声をあげます。すると、たろくんがすぐに飛んでいくのです。「まろ、どうしたの?」 「ボクはここにいるよ」という風に。まろちゃんは安心して鳴きやみます。そんな繰り返しで、どんどん世界を広げていったまろちゃんでした。

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2匹寄り添い、すくすく成長したたろとまろ。
隣の部屋に行きたくてドアが閉まっているとき、タロをけしかけてドアを開けさせるまろちゃんです。
たろくんは、背伸びして、レバーをガチャっと下げてドアを開けるのです。

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まろちゃんの視力はあるとしても、左目のほんのわずかな膜の隙間だけのはず。でも、いまのまろちゃんの生活に「不自由」という場面はありません。
キャットタワーも、はじめは用心深く1段づつ登っていましたが、いまでは、2段目にぴょんと飛び乗ります。
もう鳴いてお兄ちゃんの助けを呼ぶこともありません。
「たまに何かにぶつかるのを見ると『そうだ、見えない子だったんだ』と再認識する程度ですね」と千尋さん。

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たろちゃんはといえば、9キロ近い大猫に。そして、最近、たろとまろの関係にはこんな逆転現象が起きています。

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「本来の性格からすると、じつはたろのほうがずっと甘えん坊だったみたいで・・・。よくまろに甘えるポーズで寝ているのですが、 たろの大きさだけを縮小すれば、まるで仔猫が母猫に甘えるの図なんですよ」と、千尋さんは笑います。

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千尋さんは、ごく最近、結婚して一軒家にひっこしたばかりです。結婚が決まったのを機に、この1月、2匹はアリスの会から正式譲渡となりました。
「私の中では、もうとっくに預かり猫ではなく、ずっと一緒に暮らすことを決めていました」

旦那さまに、たろちゃんはころりとなつき、まろちゃんはじわじわとなついている最中とのことです。
どうぞ、末永くおしあわせに!

さて、お知らせがふたつ。

※11日土曜日にお手伝いさせてもらった保護子猫3姉妹の里親探しは、3時間で、3匹ともおうちが決まりました!
最初に、ピーナッツ色のコが女性に一目ぼれされ、その方は旦那さまに携帯で伺いをたてて「ダメ」と言われたのですが、 諦めきれず、再度の電話でご主人から「そんなにお前が飼いたいコなら」と、OKをもらいました。先住の保護猫保護犬が1匹ずついるおうちです。 キジ三毛の長毛のコは、長いこと飼っていた猫を亡くしたばかりのおうちへ。ベージュ色のコは、家族連れの子どもたちに気に入られ、 お母さんは諦めさせる方向だったのですが、それまで沈黙を守っていたお父さんの「僕はいいよ」というひと言で、決定。

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3件とも取材を快諾していただいたので、いずれ3姉妹のその後をご報告したいと思います。お楽しみに。
里親探しの場ををこころよく貸してくださって、3匹にしあわせへの道を開いてくださった松山庭園美術館さま、ありがとうございました!
本日14日19時~ BSジャパン「ポチたま」で、「美術館の子猫」続編が放映されるそうです。虎之介くんや福ちゃんたちの生き生きした日常風景が流れます。

※今発売中の「猫びより7月号」で、サブ特集「看板猫がつなぐ絆の物語」の撮影・執筆をさせていただきました。
道ばた猫日記「ネロくんの秘密」でもご紹介した川口市の喫茶店「カフェ・ド・アクタ」を舞台に、猫の物語とひとの物語があたたかく交錯します。お読みいただけたらうれしいです。

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写真

道ばた猫日記ライター紹介

佐竹 茉莉子(さたけまりこ)

フリーランスのライター。路地や漁村歩きが好き。町々で出会った猫たちと寄り添う人たちとの物語を文と写真で発信している。写真は自己流。著書に『猫との約束』『寄りそう猫』『猫だって……。』『里山の子、さっちゃん』など。朝日新聞WEBサイトsippoにて「猫のいる風景」、辰巳出版WEBサイト「コレカラ」にて「保護犬たちの物語」を連載中。

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カテゴリ: 道ばた猫日記
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みにゃさまのコメント

たろくんとまろちゃん、素敵な人と巡りあえて本当に良かったですね。亡くなってしまった兄弟の分も長生きして欲しいです。そして先週の三姉妹、本当に良かったですね。実は私は家の新築より猫を迎えることの方が良かったので、家族の為に張り切っている主人には申し訳ないのですが、複雑な気持ちです。娘はきっと亡きそらがまだ新しい子を迎えてほしくないのかなと言っていますが、私はむしろそらのためにも新しい子を迎えたいと思っています。

by ふみちゃん 2016-06-15 09:48

たろくん、まろちゃん 幸せになって本当に良かったですね。命がつながって良かった。こういう話ばかりだと嬉しいです。限りがあるかもしれませんが、私も命をつないであげたいと思っています。とりあえず今は4匹の子達がいるので・・・。
うちのりん吉君もたろ君のようにドアを開けるので、朝起きてみてびっくりすることがりあります。
ドアというドアが全部開いてる!!!なのです。

by ぺったんの母 2016-06-15 10:28

たろくん&まろちゃん、素敵な人に巡り会えて、幸せですね!! 亡くなった兄弟の分まで、ずっと長生きしてほしいです。

by あるとはは 2016-06-15 19:08

>ふみちゃんさん

運命の猫って、ほんと、思いがけない時にやってきますって。そして、きっとその子はそらくんが空の上から、そっとプッシュしてる子だと思います~ いつかな~ 楽しみですね!

by 道ばた猫 2016-06-16 00:12

>ぺったんのお母さん

ドアというドアですか! りん吉くん、エネルギッシュですね~ たろくんは、やってきたばかりでまだ鍵をかけてケージインの時、朝起きたら、千尋さんの枕もとで寝ていたそうです。ケージを揺らして、角を結わっていた紐をゆるめ、その隙間から脱出したんですって。猫って頭いいですね!

by 道ばた猫 2016-06-16 00:19

>あるとははさん

つらい思いをした分、この上ないおうちに巡りあいました。うんとしあわせにならなくては。
そして、捨てた人が、いつか自分のしたことのむごさ、重さに気づくときが来ますように。

by 道ばた猫 2016-06-16 00:24

みにゃさま、温かいコメントありがとうございます。

>ふみちゃんさん
私も亡くなったきょうだいの分まで長生きして欲しいと思っております。
なので最近はダイエットに力を入れています。

>ぺったんの母さん
今の家は前の家には無かった引き戸が沢山ありますが、
たろは一晩で開け方をマスターしてしまいました。
どうしても開けて欲しくない扉に簡易鍵を付ける日々です。

> あるとははさん
2匹とも長生きのためにダイエット中ですが
引っ越して家が広くなった為かたろの体重が落ちました!
この調子で頑張って欲しいです。

by 千尋(たろまろ飼い主) 2016-06-16 21:40