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[猫ブログ] いろいろな連載と、ときどきお知らせ。

ネコノミストの研究室

2016年05月18日

日本における動物愛護(保護)管理をめぐる法律のあゆみ

猫を愛するみなみなみにゃみにゃさま、こんにちは。
ネコノミストの武井泉です。前回のネコノミスト北による「ネコノミストの研究室」第1回連載に、多くのみにゃさまからコメント、励ましの声を頂きましたこと、北とともにとてもうれしく思っております。

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(武井の息子こたろう(上)、娘のもも(下)が小さい頃の様子。2匹はきょうだい猫で、茨城県に捨てられていたところを埼玉県で保護猫活動をしている方が保護してくださり、縁あって我が家に来ました)

今日は第2回目ということで、これから私たちがこの場でご紹介していこうと思っている様々な記事のもととなる、日本の動物愛護に関する法律のあゆみについて、ごくごく簡単に整理しておきたいと思います。


1.日本で初めての動物保護・管理に関する法律(1970年代~)


日本において動物の保護について規定された初めての法律は、1973年(昭和48年)にさかのぼります。「動物の保護及び管理に関する法律(動物保護管理法)」というものです。この中で、

 ①保護動物の虐待・遺棄の防止
 ②動物愛護思想の普及啓発
 ③動物による人への危害の防止
 ④自治体による動物の引き取り

といった内容に関する項目が、13条にわたり盛り込まれました。しかし、この法律は、各項目について大きな考え方、理念を示すにとどまり、細かな規定が示されたものではありませんでした。

この法律が制定された昭和40年代は、日本全国で保健所等に持ち込まれ殺処分された動物の数はなんと122万1千匹に及びます(昭和49年の統計)。この当時は、野良犬が多く、殺処分された動物の大半は犬(115万9千匹)でした(現在の殺処分の割合は、犬と猫が逆転しています)。

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図:全国の犬・猫の殺処分数の推移
出所:環境省「平成26年度犬・猫の引取り及び負傷動物の収容状況」(https://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/2_data/statistics/dog-cat.html



2.第1回目の法改正:国内外の世論(1999年)


日本で最初の動物保護・管理の法律が制定された後、日本はバブルの時代を経て、核家族化・少子高齢化が進み、社会におけるペットの重要性が高まっていました。そのため、動物の保護に関してより詳細なルールを定めるよう法改正を行うべき、という国内世論が高まりました。一方、国際的には、日本の捕鯨や実験動物についての報道が海外で放映され、日本に動物の虐待や保護等についての明確な定義がなく、動物虐待に対する罰則が緩いことが批判の対象となりました。

こうした流れを受け、1999 年(平成11年)に、25年ぶりに同法律が改定されました。法律内の、動物『保護』という用語は動物『愛護』に変更され(動物愛護管理法)、基本原則の中に、「動物は命あるもの」という表現が盛り込まれた他、以下のような点が改善されました。

 ①動物取扱業者に対する規定の導入(届け出制の導入)
 ②飼い主責任の徹底
 ③虐待の例示や罰則の強化
 ④国・地方自治体の役割の明確化
 ⑤動物愛護管理員(自治体職員)・動物愛護推進員(民間:注1)の設置

この法改正で、動物への対応に対する罰則が初めて明記されました。また、大きなポイントとしては、海外の諸外国では一般的である動物取扱業の認可制にならい、日本でも動物取扱業(ペットショップやブリーダー等)を届出制にすることが決まりました。法律の条文は31条に増えました。


3.第2回目の法改正(2005年)


その後、2005年(平成17年)にも再度法改正が行われ、50条の条文となりました。大きな改定は以下のようなものです。

 ①動物取扱業の規制が更に強化され、登録制へ
 ②動物虐待、遺棄等に対する罰則の強化
 ③特定動物(人に危害を及ぼすような動物)の各都道府県知事の許可制へ
 ④実験動物への配慮(3R(注2))


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2014年の大雪を見て驚く猫たち


4.第4回目の法改正:最新の動物愛護管理法(2012年)


さらに2012年(平成24年)の改正で、法律は65条まで増え、更に細かなルールが加えられました。

 ①終生飼養の明文化
 犬・猫等販売業者の義務事項に、「販売が困難となった犬・猫等の終生飼養の確保」が明記されました。

 ②犬・猫販売業の規制と第二種動物取り扱い業の設置・登録
 第一種動物取扱業(動物を営利目的で取り扱い、各都道府県に登録している者)でルール違反を行った者は、登録拒否・登録取消されることができるようになった他、営利を目的としない飼養施設を持つ動物取り扱い者(動物シェルターの運営者等)に関しては、「第二種動物取扱業」としての届出が必要となりました。

 ③対面販売の義務化
 犬・猫等販売業者の義務事項に、「犬猫等を販売する際の現物確認・対面説明の義務付け」が明記されました。

 ④自治体が殺処分希望の動物引き取りを拒否できる規定の導入
 動物の飼い主・動物取り扱い業者等が、都道府県(具体的には保健所等)に動物の引き取りを要求した場合、都道府県がその引取りを拒否できる事由を明記すべきであることが示されました。

 ⑤災害時における動物救護(2011年の東日本大震災を受け)
 災害時における動物の適正な飼養及び保管に関する施策を、各都道府県が策定している「動物愛護管理推進計画」(注3)に定める事項に追加するとした他、動物愛護推進員の活動として、災害時における動物の避難、保護等に対する協力が追加されました。

④は、保健所等に持ち込まれる動物たちをめぐる飼い主や動物取扱業者のずさんな対応・状況を受け、場合によっては自治体が動物の引き取りが拒否できるというものです。動物の所有者・占有者に対して、できる限り終生飼養に努めるべきという方針を更に打ち出した形になります。


5.待たれる第4回目の法改正


このように、最初の動物保護・管理法の制定から43年、法律は様々な改定を経て今日に至っています。現在の法律も、まだ先進国に比べ、動物福祉の観点から十分でないという声もあります。

例えば、販売日齢の規制の問題があります。現在の法律では、生後56日(8週齢)に満たない犬猫の販売・引き渡し・展示が禁止と記されましたが、これは「2016年8月31日までは生後45日を期限とする」という経過措置となっています。犬や猫の社会性を形成し、免疫力を高める上で、犬は生後3-12週、猫は生後2-7週を親やきょうだいのもとで育てられることが重要と言われていますが、ブリーダーやペットショップの一部では、子犬・子猫の人気が高いことから、8週齢以前での生体販売を行っているところもあります。そのため、次回の法改正では、欧米諸国でもすでにルール化されている「生後8週齢」以後の販売・引き渡しを明文化すべきという意見が、動物保護団体を中心に挙がっています。


6.自治体の愛護条例


日本の場合、国による動物愛護・管理法とともに、各自治体の条例によっても、動物の愛護・管理のルールづくりが進められています。例えば、上に挙げた「生後8週齢」以後の犬・猫の販売・引き渡しに関しても、動物愛護・管理法ではまだ経過措置ですが、札幌市では「札幌市動物愛護管理条例」として生後8週齢までは親と子を一緒に育てることが義務化されたという事例があります。

neconomist2160518 (1).jpg (2匹の親はわかりませんが、きょうだい一緒で育てられて幸せだったかもしれません。)

日本の動物愛護(保護)・管理をめぐる法律は、徐々に変わって行きますが、動物とともに暮らす私たちも、豊かな動物との共存に向けて政府にパブリックコメントを寄せたりするなど、関心を持って行くことが必要となると思います。

次回は、これらの法律を踏まえつつ、日本の動物保護の取組みや動物をめぐる私たちの生活がどのように変化してきているのかを、少し数字(統計)なども用いて整理してみたいと思います。お楽しみに!

注1:「動物愛護推進員」とは、動物の愛護と適正な飼養管理に関する知識と熱意を持つ市民のことで、各都道府県知事が委嘱するボランティアです。動物愛護推進員は、地域の動物愛護の中心的な役割を果たすことが期待されています。
注2:「動物実験の3R」とは動物実験の基準についての理念で、①代替(Replacement)、②使用動物数の削減(Reduction)、③改善・軽減(Refinement)を意味し、1959年にイギリスの研究者らにより提唱された。
注3:「動物愛護管理推進計画」とは、各都道府県が、「地域の事情に応じて」策定した動物の愛護・管理に関する計画です。この計画は、2006年(平成18年)に策定された「動物の愛護及び管理に関する施策を総合的に推進するための基本的な指針」(動物愛護管理基本指針)に基づいて策定され、動物の愛護及び管理に関する行政の基本的方向性と中長期的な目標が示されています。

参考資料:
環境省中央環境審議会動物愛護部会第42回議事録
環境省「平成26年度犬・猫の引取り及び負傷動物の収容状況(動物愛護管理行政事務提要より作成) 」
環境省動物愛護管理法ウェブサイト



ネコノミストの研究室ブログライター紹介

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北 洋祐

京都大学経済学部卒業。三菱UFJリサーチ&コンサルティングの研究員として、中小企業政策、スタートアップ企業政策の研究に従事。一匹の野良猫を保護して飼い始めたことをきっかけに猫派となり、それ以来ライフワークとして動物愛護分野の研究にも勤しむ。2016年からは、人と猫の望ましい関係について考え発信する「ネコノミスト」として活動。現在は元野良猫のシンスケと保護団体から譲り受けたゴマの2匹とともに暮らす。好きな猫マンガは伊藤潤二『よん&むー』

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武井 泉

市立高崎経済大、東京大学大学院卒業。独立行政法人の研究所等を経て2007年より三菱UFJリサーチ&コンサルティングに入社。アジア・アフリカの国際協力事業(農村開発、社会保障等)や、ハラール市場についての業績多数。2015年より、ネコの幸せと人との共生を考える「ネコノミスト」としても活動を開始。現在、5歳の2匹の元保護猫と暮らす。これまで一緒に暮らした猫は40匹以上にのぼる。趣味は、園芸と、海外出張の合間のネコ撮影、ネコグッズの収集。

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みにゃさまのコメント

はじめまして、こんばんは。
前回のお知らせを拝見して、とても心待ちに致しておりました。
ただ、可愛いと思うに留まらず、日本全体の現状を知り、どう改善していくか、私にできることは何かをご一緒に検討、実行できればいいな、と思っております。
お二人がいらしてくださって、とっても心強いです!

by さっちゃんママ 2016-05-18 20:32

法律の事などはなかなか頓着しないものですが、知ること学ぶことは大切だなと感じます。私の住んでいるところも動物の引取が統合され少なくなったり、うまれて間もない子猫の引き取りを拒否したりできるようになったようです。取り巻く環境が変わってもできることをやっていけたらと思います。

by あずにゃん 2016-05-24 13:44