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[猫ブログ] いろいろな連載と、ときどきお知らせ。

猫又トリップ

2016年03月09日

スイス生まれ神戸育ち

目が見えない、耳も聴こえないブッチ。
でも大丈夫。臭覚と空気の流れでレイアウトを認識できるから。

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ぼくは海から流れ込む潮風と太陽の匂いが大好き。


帰国子女


シャム猫のブッチは19歳の男の子。生まれはなんとスイスのチューリッヒ!
1996年、チューリッヒの日本人学校で働いていた永田浩史(ながた・ひろし)さんは、赴任して1年が経った頃、猫のブリーダーをしている友人から「子猫が生まれたから見に来ない?」とお誘いを受けました。
そして、奥さまの昭子(あきこ)さんと一緒になんとなく見に行ったつもりが、とにかくそのかわいさ、美しさにやられてしまったのでした。浩史さんの「(昭子さんが)日中はひとりで寂しいだろう」という思いも後押しして、ブッチとクッキーという2匹の真っ白い子猫(生後2ヶ月)を譲り受けることになったのです。(後日だんだん黒色が付いて行くさまにビックリしたといいます)

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美しいブルーの瞳にうっとり。

そして1999年、任期を終え日本に帰国することなった永田ファミリー。猫たちの海を越えた引っ越しはどうなるのでしょう??
実は、当時、日本の航空会社は手荷物扱いで猫を運べて、しかも空港での検疫も一切なし。猫たちはなんなく初来日を果たすことができたのでした。猫たちは海を渡った自覚はないだろうけど、すごいにゃー。
きょうだい猫のクッキーは9歳で突然逝ってしまいましたが、二世帯住宅でいつも誰かがいる家だから寂しくはないよね。家族のことが大好きで安心しきって寝ている様子が微笑ましいです。

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目の見えないブッチのために障害物になるものすべてに緩衝材が。



病気から猫を思う


ブッチが12歳のころ、てんかんのような発作があらわれました。神経系の病気で一時は安楽死を考えたほどです。しかし、昭子さんのお姉さんの「諦めるな!」という励ましから良い獣医さんとの出会いに繋がり、治療をはじめて半年で回復へと向かいました。「姉はブッチの恩人です」と昭子さんは家族への感謝を忘れません。

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ごはんあるかにゃー?

しかし大病の影響から目と耳が徐々に悪くなっていくのです。色んな角に頭をぶつけるようになり、とうとうインターホンや掃除機にまで反応しなくなりました。加えてバランス感覚も失って......、それでもブッチは生き続けます。相変わらずの食欲で1回の食事量は70gと高齢猫にしては多め、さらにブッチが欲しいと言えばその都度与えています。そして現在の体重は6kg。若い頃は9.5kgもあったそうで、昔から食いしん坊だったという話に激しくうなずく私でした。

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ムシャムシャ、シャム猫。

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うまいにゃー。


2015年3月、尿路結石で動物病院へ。フードにも気を使っていたのになぜ?二度目の尿路結石ということもあり、昭子さんをさらに燃え上がらせました。とにかく水を飲ませ排泄させることが重要と考え、どうすれば飲んでくれるか?を深く追求した結果、通常与えているカリカリに水を注ぎ、スープを作るという答えを導きだしました。カリカリをふやかすこともでき、味と風味の付いた水=スープの完成はまさに一石二鳥で、これによりブッチの飲む量も増え(1日450ccを目標にしている)、トイレの回数も増えたと言います。また「1日中ホットカーペットの上にいるのは健康的でない、乾燥してさらに良くない」とホットカーペット禁止令を発動したのも功を奏したのか(?)、今年はすこぶる調子が良いそうです。

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ドライフードのPHコントロール2(ロイヤルカナン)からスープを摂る。

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トイレの回数をメモ。促すことも家族の大切な努め。




素晴らしきネコライフ


「しずかにまじめに生きているところが好き」「前向きで一生懸命生きていることが尊敬に値する」「いつもブッチを見て元気をもらっている」と魅力を語り出したら止まらない永田ご夫妻ですが、昭子さんに関しては猫を飼ったのがブッチとクッキーが初めてなのだとか。人を夢中にさせる猫の存在、家族と言いきれる猫の存在、目や耳が聴こえなくても懸命に生きるブッチの姿とそれを支える永田夫妻に出会えたことが私の宝物になりました。お互いを支え合う気持ちがひとつで、猫も人も健康でいられるのかな。きょうだいのクッキーの分まで長生きしてね。

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窓から見える淡路海峡大橋。猫の存在は夫婦を繋ぐ架け橋に。

「うちの猫もしあわせかな? しあわせにしないといけないな」と改めて気を引き締めるきっかけをいただいたような気がします。みにゃさまの猫ライフにもいい刺激が与えられると幸いです。

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天高く、お天道様にまっすぐに。

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家族と一緒なら、どこでだって生きていけるさ。





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写真

猫又トリップライター紹介

ケニア・ドイ

1972年兵庫県生まれ。ほとんど犬猫カメラマン。著者に「ぽちゃ猫ワンダー」(河出書房新社)、「じゃまねこ」(マイナビ出版)がある。新刊「ご長寿猫がくれたしあわせな日々~28の奇跡の物語~」祥伝社より絶賛発売中。現在、黒背景で行うペット撮影会「ドイブラック」を全国で展開中。

http://kenyadoi.com

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カテゴリ: 猫又トリップ
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みにゃさまのコメント

今回はぐっとくるお話でした。ブッチ君の世界はなんて穏やかなんでしょう!
そしてそれを支えているご夫婦の愛情もすばらしいと思います。
まっ白い子猫時代も見てみたかったね。

by あずにゃん 2016-03-09 11:31

私もぐっと来ました。
トイレの回数メモに愛情を感じます。
愛情をかけてあげれば長生きしてくれるわけではないのでしょうけど、長生きには愛情が必要なのだなと改めて思いました。ブッチちゃんずっとずっと長生きしてね。

by しましま 2016-03-09 12:06

あずにゃんさん
さきほど、飼い主さんからこの記事を読んで「自然と涙がでた」と嬉しいご報告をうけ、じーんときています。

by ケニア・ドイ 2016-03-09 13:21

しましまさん
ハンデがある分、ご家族の負担はたいへんなはず。
平然と生活の一部としてこなす永田ご夫妻をこころより尊敬します。
「家族」っていいね。

by ケニア・ドイ 2016-03-09 13:29

心暖まる飼い主さんとブッチちゃんのお話、そして愛情のこもったケニア・ドイさんのお写真、拝見させて頂いてありがとうございました!
読み終わった後、思わずわが子を抱きしめながら『元気で長生きしてね』と願っていました。
私も永田さんご夫妻のように、わが子に愛を持って接していきたいな、と思っています!
ブッチちゃんが、ご夫妻と穏やかな日々をずっとず~~~っと過ごして長生きしますように!!

by りきママ 2016-03-09 13:34

元気に長生きしてもらいたいですね。
生きてる姿、生活してる姿に感動です。教えられること多いですね。
寒い時は湯たんぽしてあげるといいですよ。
我が家の24年近く一緒に過ごした猫も、電気カーペットだと乾燥するので、湯たんぽしてしてました。湯たんぽにべったりでしたよ。

by たまりか 2016-03-09 21:23

ブッチに、生きてるとこんなにいいことがあるんだね、すごいねって話しかけています。ケニアさんのとてもあたたかい視線に本当に感謝です ! いただいたコメントもありがたくて読み返してます。我が家にとって記念すべきブッチとクッキーの日となりました。

by 昭子 2016-03-09 21:43

Heppoko謝の日!
ブッチの素敵な物語に出会えて感謝です。幸せいっぱい!愛情たっぷり!全身で受け止め懸命に生きているブッチ!
ブッチの誇らしい生きざま その勇姿に感動しました。
素敵なサンキュー!感謝の日!になりました。ありがとうございます。

by Heppoko 2016-03-09 22:44

Heppokoさん、ありがとう。
相変わらずブッチは食べては寝て、起きては食べ、また、寝てる、ごきげんな一日を過ごしています。

by がた 2016-03-09 22:52

目が見えないこと・耳が聞こえないことは、ちょっぴり不便だけど不幸じゃないよ。
だって僕はこんなにも大切にされて愛されてるんだよ。
今日もおいしいものたくさん食べるんだ♪

by ブッチ 2016-03-10 06:00

ロンドン在住ですが、こちらの「売ります買います」ウェブサイトで「引っ越すことになったので猫を売ります」という書き込みを沢山見かけます。その度に「簡単に手放すのなら最初っから飼うな 」と腹立たしい思いがします。ブッチ君のご家族は、ブッチ君のことを本当に大切にしていて愛情をたくさん注いでいることが伝わってきました。癲癇を患ったブッチ君のことを「諦めるな!」と強く励ましてくれたお姉さんも素敵です。ブッチ君、これからも元気でもっともっと長生きしてね。クッキーちゃんがきっと見守っていてくれているね!

by ゆーこ 2016-03-10 07:08

ゆーこさん
ロンドンからのお便りありがとうございます。イギリスの方が動物愛護が進んでいるイメージだったのですが…そういう書き込みは残念ですね。一時は安楽死も考えた永田夫妻ですから、叱咤激励してくれたお姉さんは命の恩人。ご家族と獣医さんの勝利です!

by ケニア・ドイ 2016-03-10 10:41

りきママさん
こちらこそありがとうございます。私も帰宅後すぐにうちの三毛猫を抱っこしました。(抱っこは嫌がるのですが…)他人のふりみて我がふり見直すいい機会となりました。まぁ、毎回そう思うのですがね…w

by ケニア・ドイ 2016-03-10 12:02

たまりかさん
そうですねー、教えられることばかりでこの経験は私が猫を飼う上での大切な宝物です。みにゃさまに共有できることもまた喜びになります。たまりかさんちは湯たんぽですかー!そして24歳まで生きた猫!絶対に効果ありですね!すごいー!!

by ケニア・ドイ 2016-03-10 12:07

昭子さん
このたびはお世話になりありがとうございます。その想い、ブッチに届くといいなぁ。コメントの数々がどれも暖かくて、それが私の原動力に。これからも最大限の注意を払い、敬意をもって猫又さんに接することを約束します。永田ご夫妻の記念日が増えましたね。おめでとうございます!

by ケニア・ドイ 2016-03-10 12:16

ブッチちゃん、可愛いですね。
そして穏やかでとっても良いお顔をしていますね。
トイレのメモやゴハンの工夫、角に巻かれたの緩衝材から
どれほど愛情を持って育てていらっしゃるか伺えます。
私はこれまで2匹の猫を看取ったことがあり、その都度看病は大変でしたが、
常にそばに居てお世話をすることは濃密で幸せな時間でした。
思い出して涙が止まりませんでした。
たくさんのことを猫に教えられたと思います。
耳が聞こえなくても、目が見えなくても、ブッチちゃんはきっと
クッキーちゃんの分までご夫妻の愛情でまだまだ長生きしてくれることでしょう。
素敵なお話をありがとうございました。

by cona 2016-03-10 16:47

家の中でだけ生きてきたブッチが、こんなにたくさんの人に見て頂き、たくさんの声を頂けて感激です!ありがとうございます。また、いい顔してる、男前だね、かっこいいねって言われてブッチも得意げ・・・いえいえ何も考えてないでしょうが、とにかくマイペース、ノンストレスがとりえのブッチです。ケニアさん、こんなに素敵に撮ってくださって本当にありがとうございます、宝物です!次の冬は、たまりかさんちのように(24歳すごいです!)湯たんぽを使ってみます。

by 昭子 2016-03-10 23:02

Heppokoさん
3/9公開だからサンキュー、本当に感謝の日になりましたよー。

by ケニア・ドイ 2016-03-11 09:47

がたさん
ごきげんな日々がいつまでもつづきますように。
ありがとうございました。

by ケニア・ドイ 2016-03-11 09:49

ブッチー、19歳で6kgってすごいよ。本当に食べることが大好きなんだね!
もうすぐ春ですね。日本の四季って最高でしょ?

by ケニア・ドイ 2016-03-11 09:52

conaさん
数々の苦労、工夫があっていまのブッチがあるんだなぁと勉強させていただきました。
conaさん、どうか悲しまないでください。看取りは誇り、なかなかできることではありません。
こちらこそ素敵なお話をありがとうございます。

by ケニア・ドイ 2016-03-11 10:08

生きていることがいちばんの幸せ。
大切な家族と過ごせる時間はブッチの最高の時間だろうな~
ご夫妻の愛情がブッチの ブッチのマイペースライフがご夫妻の元気の源なんですね。
生きているって やっぱり 素晴らしいこと!

by ako 2016-03-11 22:24

akoさん
お互い支え合う姿、共に生きる、素敵なご家族ですよね!

by ケニア・ドイ 2016-03-16 09:37

共に生きる=共生
ブッチからたくさん教わりました。
幸せはお互いに作り出しもの。
お互いに感謝!素敵です。
ブッチに感謝です。

by Heppoko 2016-03-16 22:13