[猫ブログ] いろいろな連載と、ときどきお知らせ。

デビィちゃんは、胸にちょっとだけ白い毛のある黒猫さん。冬休みに泊まった南房総のペンション「海岸通り」で出会いました。
ロビー受付で、今日の泊まり客をお待ち受けするのが、デビィちゃんのお仕事。
フレンドリーで気立てのよい彼女、なんと御年２５歳なのですって！　人間でいえば、１３０歳くらい。そんなお歳にはまるっきり見えませんとも。



長年、このペンションの受付嬢として愛されてきましたが、最近は、持ち場を離れて、「ナーゴナーゴ」（小腹がすいたわ、なにかちょうだい。もっとかまってちょうだい）と、文句を言いながらオーナーの後をついて回ることが多くなったとか。食べ物の好みもうるさくなってきたそうです。２５歳にして、歩き回って文句を言うほどのお達者ぶりは、お見事です。



子猫の時にここに居着いてから、とくに病気もせず元気だったデビィちゃん。数年前から、歩くたびにあちこちぶつかるようになりました。獣医さんに診てもらったところ、「白内障でほとんど目が見えてない」ことが判明。
「手術をしてもよくなる保証はナシ。それでも、これまでの長い経験値で、ストレスもさほどなく元気に暮らしていくでしょう」との見立てでした。その通り、とくに不自由もなく、受付係を務めあげる毎日です。不思議なことに、大好きなオーナーのいる方向はいつもしっかり認識できるようなのです。

ところで、私はかなりの猫バカと自認しているのですが...・、ここのオーナーには敵いませんでした！
ペンション敷地内、玄関回り、ロビー・・・と、あちこちに猫たちが思い思いにのんびりゆったりくつろぐ姿が。
「２０匹以上いますよ」と、オーナー。みんなある日ひょっこりやってきて居ついてしまった子たちで、暖かいねぐらがそれぞれにちゃんと用意されています。
「しまちゃんや～」「トラちゃんや～」と、猫たちに話しかけるオーナーの声のやさしいこと。一匹一匹に平等に愛を注ぎ、毎日のスキンシップを欠かしません。
驚いたことに、なんとデビィちゃんより年上が‼　２７歳の三毛猫モモちゃんです。ほとんどを自室で過ごすモモちゃんですが、まだまだお達者。



２階の客室には猫の出入りはさせず、食堂もふだんは出入りさせないとのことですが、「今日は猫好きのお客さんだけだから特別」ということで、一階は猫パラダイスに。

箱根の富士屋ホテルで修業を積んだシェフであるオーナーの料理は、どれもこれもとってもおいしく、食後はご夫妻と猫話が弾みました。長年のリピーター客が多いというのもうなづけます。
６～７年前のクリスマスの頃。あるご夫婦が泊まりにきました。当時居ついたばかりの子猫が、亡くしたばかりの愛猫にそっくりだというので、懇願されて、ひと晩だけルール違反の客室貸し出しを。翌朝、すっかりなついた子猫とは離れがたくなったご夫婦は、そのまま譲り受け。
「あの後、一回連れてきてくれたけど、その子は赤の他人みたいな目で僕たちを見るの。ああ、今が充分にしあわせなんだなあと嬉しかったですねえ」と、オーナー。
奥さまは、言います。
「このひとは、猫とはいい感じで話が通じるんですけど、私とはだんだん話が通じなくなってきて（笑）。生まれ変わったら、この人はきっと猫になるだろうけど、私はまた人間に生まれ変わりますから探さないでね、と言っているんですよ～。だってね、やってくる猫たちをみな受け入れるからもうたいへんなの。今生はもうしかたないけど（笑）

一日の終わり、猫を見やるオーナーのえも言えぬやさしいまなざし。前世ではノラ猫で、仲間たちが路頭に迷うのをを見捨てておけないのではと、ふと思ってしまいました。



「これ、女房には内緒だけどね、早朝と夕方、ゴミ捨て場の茂みで暮らしてる猫たちにも、ご飯を車で毎日運んでるんです。明日朝、いっしょに行きますか？」と、オーナー。
聞こえないふりをしていらしたけど、奥さまがウフフ、と笑ってましたよ、すべてお見通しみたいですよ。

翌朝、日が昇るとともに、玄関の前で猫たちがお待ちかね。



今日の朝ごはんは豪勢です。イワシのホイル焼きをポンポン振る舞います。週一くらいに「いいイワシが入ったよ～」と、地元の店から電話がかかってくるそうです。
みんなふくふくとして長生きなのは、おいしいご飯のせい？



「それとね、あと二つ。スキンシップと新鮮なお水が、猫の健康にはぜったいに大切なんです」とマスターが教えてくれました。
しょっちゅう話しかけ、スキンシップをすることで、猫たちはこれだけ多頭飼いでもケンカをせず、仲良く暮らしているのです。
「年金は、猫たちの避妊去勢手術と、餌代で消えてしまう。もういやになりますね」と、言いながらも、あっはっは、と楽しそうに笑うオーナーです。
「できることなら、房総じゅうの猫たちの手術をして、こんな風に平和に暮らさせてやりたい。自治体が本気になれば、解決できる話なんだけどねえ」。
深い深い猫愛の持ち主なのです。



さあ、今日も、良い天気。オキザリスの花が開き始める玄関周りは、猫たちがひなたぼっこをしに集まってきました。
お客さん大好きの三毛のあんずちゃんも。喫茶店にもらわれていったけど戻ってきちゃったクロモモちゃんも。
デビィちゃんは、庭にお散歩に出かけます。目は見えなくても、歩きなれた道なので、足取りも軽く。



先日、お散歩に出かけたデビィちゃんが、４日も行方不明になり、必死の捜索にも見つからず。
「３０年近くも猫たちと一緒に暮らしてきて、こんな別れかたは絶対に嫌だ！！」と、男泣きのオーナーでした。
デビィちゃんは、敷地内の茂みの奥のツタに絡まって動けなくなっているのを発見。、痩せてしまっていましたが、すぐに復活。またもや、オーナーとの「甘い生活」を謳歌する毎日です。
子猫の時に交通事故に遭い、マスターの手で獣医さんに運び込まれて、左前脚切断で命を取りとめ、ここの子になったケンちゃん。



「ケンちゃんはね、お花畑でお昼寝するのが大好きなの。コワモテのくせにロマンチックでしょう」と、奥さま。
「ペンションとしてやっていくのに許容範囲を超えた猫の数」というネットの書き込みを一件されてしまったそうですが、逆手に取れば、猫好きにはもうたまらない猫まみれパラダイス。どうぞ「猫も人もしあわせに過ごせる、料理自慢のアットホームなペンション」であり続けてください。　応援しているファンはいっぱいますから。



見送ってくださったご夫妻と、ケンちゃん。そして、「またのお越しを！」と、キリリと背筋を伸ばしたデビィちゃん。
おいしいお料理と、猫ぐるみでのあたたかいおもてなし、ありがとうございました。
猫たちのためにも、お二人そろっていつまでもお元気で。また泊まりに行きますね！

☆ペンション海岸通り
千葉県館山市布沼１２０７－３３
猫好き大歓迎