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[猫ブログ] いろいろな連載と、ときどきお知らせ。

道ばた猫日記

2015年11月17日

愛すべきオトコ、タフぼん

タフぼんこと「タフ」は、9歳半のおじさん猫。すぐお腹を見せてしまうところがご愛嬌の、飼い主のセツコさんにとってご自慢の猫です。

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でも、セツコさんとタフぼんとの出会いは、けっして一目ぼれではありませんでした。
「行きがかり上というか、しかたなくというか...。最初は、この子を愛せるかまったく自信はなかった」と、セツコさんは言います。

9年前の10月。北海道旅行を目前にしていたセツコさんの耳に聞こえてきたのは「ミギャーオ、ミギャーオ!」という凄い鳴き声。表に飛び出しててみると、近所のおじいさんが2か月足らずの子猫をとっつかまえたところで した。目ヤニで両目がつぶれかかった貧相な子です。聞くと、近くのお豆腐屋さんの裏あたりをちょろちょろしてるノラの子で、「庭を荒らすので、これから遠くに捨てに行く」とのこと。
「ちょっと待った!」
あわてて、セツコさんは、ストップをかけました。なんとか里親を探さなきゃ。でも、これから北海道旅行。どうしよう?
セツコさんは、思わず、おじいさんに頼みました。「私が旅から帰ってくるまで、この子の面倒を見てもらえませんか」
「いいよ」・・・なんとおじいさんは、あっさり引き受けてくれました。「私だって、猫が嫌いなわけじゃないんだ。大事にしてる庭を荒らされるのが嫌なだけなんだ」

旅から帰ってくると、子猫は目がきれいになっていて、おじいさんは嬉しそうに言いました。「きれいな目になっただろ。毎日、拭いてやったからね」
さて...。目はきれいになったものの、子猫は、目つきも悪く、相変わらずの貧相猫でした。

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おまけに、全身シラミだらけ。シラミとりの櫛で、毎日風呂場で梳いてやると、プチプチプチプチと、卵がとれるのです。
「うっわあ・・・」とトホホな思いで、シラミ取りを続けて何日か。プチプチプチプチと梳いてやったとき、仔猫はセツコさんを見上げて「にゃあ」と甘え声で鳴きました。
その瞬間、セツコさんの胸にたまらないいとおしさが込み上げてきたのでした。
「あとはもう、可愛さ一直線。気がついたら、手放せなくなっていました」

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お豆腐屋さんの裏にいたから、「タフ」という名に。インドネシア語で「豆腐」という意味です。
タフぼんは、やはり家の前で保護した先住猫の美猫ぴーちゃんを母のように姉のように慕って大きくなりました。

図体が大きくなってもいつまでも甘え続けて、ついにピーちゃんからうっとうしがられる始末。そばに行きたいけど、ビビッて近寄れないタフぼんなのでした。
タフぼんの4年後に、やってきたのが茶白の「ミータロ」。猫風邪で目がふさがった子猫を保護したものの治療費がかさんでネをあげた友人から、セツコさんが引き受けました。右目失明となりましたが、気のいい超甘え ん坊のオトコです。タフぼんと違うのは、カラッと強気なところ。
ぴーちゃんとみーたろが仲睦まじくしているのを目撃して「ガーン」とかたまってしまったタフぼん。

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タフぼん、なんともわかりやすいタイプなのです。
あるとき、タフぼんの血尿が続き、獣医さんに。通院治療を続けても、よくなりません。通院をやめてみたら、ぴたっと治りました。血尿のきっかけは、みーたろの去勢手術後のエリザベス姿が怖くてビビりまくったストレス からだったようなのですが、さらに、通院のストレスが加わって、いつまでたっても治らなかったのでした。
獣医さんいわく、「親分顔なのにねえ」。

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たしかに。タフぼん、貧相顔の子猫だったのに、いつのまにか、親分顔の立派な猫になっていました。実際は、この上なく、ナイーブで、ビビりで、シャイで、甘えん坊のオトコなのですけれどね。おもらし癖がいまだあるの も、ちょっとしたことにビビってのことかもしれません。セツコさんがわざと隠れると、すぐに鳴いて探し始める、いまだ子猫のようなところもあるおじさん猫です。

セツコさんの家には、1年前に子連れの母猫ルナもやってきました(猫日記『ノラ母さんのミステリー』)。この夏、セツコさんは町内会に働きかけ、ノラたちの避妊去勢手術と、その後の地域猫活動の発起人として一歩を 踏み出したばかりです。4匹のノラを「うちの子」として迎えて、いろいろ思うにつけ、「猫には何の罪もない。猫問題は人問題。地域で手をつなぎ、不幸な猫をなくしたい」という思いがつよくなったからでした。

「4匹それぞれにもちろん可愛いけれど、タフぼんのこの可愛さはまた格別でしょう? チャームポイントは、鼻周りの模様と、マスカット色の瞳、図体がでかいくせにナイーブなところかな。初めは愛せるかしら、なんて思っ た出会いだったけど、なんのなんの」と、セツコさん。

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恋は一目ぼれから始まるとは限らないのです。
というか、そもそも可愛くない猫なんて、この世に存在しないのです。
そう、飼ってしまえば、うちの子がいちばん。

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愛すべきオトコ、タフぼん。でも、もうちょっと心臓がタフになると生きやすいかもね!


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道ばた猫日記ライター紹介

佐竹 茉莉子(さたけまりこ)

フリーランスのライター。路地や漁村歩きが好き。町々で出会った猫たちと寄り添う人たちとの物語を文と写真で発信している。写真は自己流。著書に『猫との約束』『寄りそう猫』『猫だって……。』『里山の子、さっちゃん』など。朝日新聞WEBサイトsippoにて「猫のいる風景」、辰巳出版WEBサイト「コレカラ」にて「保護犬たちの物語」を連載中。

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カテゴリ: 道ばた猫日記
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みにゃさまのコメント

なんて味のあるオトコなんでしょう!タフぼん! 獣医さんの「親分顔なのにねえ」で吹き出してしまいました(>_<)  セツコさんのおうちの子になれて良かったね。 出会いって不思議ですね、本当に。。
うちは両親が猫嫌いで、自分もなんとなく猫の目が怖かったんです。
それなのに、目つきの悪い愛想のない大人女子ノラ猫だったうちの子に「今日もかわいいねぇ~」って毎日言ってるんですから。。ホントに、飼ってしまえば「うちの子がいちばん!」ですね^^

セツコさんの地域猫活動がみなさんに広がっていきますように。セツコさんありがとうございます。

by さりゅ 2015-11-17 13:57

タフぼんくん、なんて可愛いんでしょう‼生まれもって絵に書いたような可愛い子もいますが正直、(あらら~)と思う子って、誰にも負けない可愛さを隠してたりしますよね。我が家に十六年いた子は(あらら~)がエンドレス状態な子でした。でもその見た目とは想像もつかない可愛い子でした。私を本当に信頼してくれて、出産の時は助産師をしました。子育て中はベビーシッターもしました。安心して任せてくれました。里子に出す前には事情を説明してあげれば解ってくれて、探したりもしませんでした。タフぼんくんを見たら、懐かしくて、また会いたくなりました。

by ふみちゃん 2015-11-17 15:52

素敵な記事にしていただいてありがとうございます。
タフぼんぼん、ほんと、図体はでかいのに何かと遠慮がちなところがかわいくてたまりません。みーたろのいけいけどんどんの性格と正反対。とはいえそのみーたろもルナのアタックにタジタジで笑っちゃいます。ぴーはそんなみんなを鷹揚に受け入れてくれていてほんとにフレンドリーな優しい子です。
猫たちは一匹一匹みんな性格が違ってて面白いですね。

地域猫のこと・・・。どなたかが「セツコさんはこの町内にいるノラ猫みんなのお母さんなんですね。」って言ってくれました。あらま、そうなのかな。結構大所帯なんですけどー。ふふふ。

by nona 2015-11-17 22:51

>さりゅさん

さりゅさんちの元ノラさんは、今、毎日「今日もかわいいねえ~」と言ってもらえて、しあわせな子ですね! しっかし、「今日も」というところが、最高の殺し文句ですね。さっそく使わせてもらおうっと。

by 道ばた猫 2015-11-18 02:51

>ふみちゃんさん

十六年エンドレスに、あらら~って、めちゃめちゃカワイイ。もうかわいがりがいがあるってもんです(身に覚えアリ)。出産手伝いをさせてくれるほど信頼してくれたなんて、それは忘れがたい猫さんでしたね~

by 道ばた猫 2015-11-18 02:57

>nonaさん

あのルナちゃんを仲間に迎え入れた3匹。みんな幼少期に苦労した過去があるけど、これからは、のんびりまったり温めあっておじいちゃんおばあちゃん猫になるまで長生きしてほしいな。
nonaさんも、町内猫含めみんなのお母さんなんだから、ずっとずっと元気でいなきゃね!

by 道ばた猫 2015-11-18 03:04

鼻のまわりの模様が蝶々にしかみえません。家の猫が一番可愛いって誰でも思いますよねぇ。もうデレデレです。

by リッテとマロンのまま 2015-11-18 11:27

>リッテとマロンのデレデレままさん

鼻の周りの茶色っぽい模様(しょう油染みというらしいんですが)って、シジミチョウがはりついてるみたいですよね~ うちのナツコもうっすらシジミチョウがはりついてます。

by 道ばた猫 2015-11-18 22:02

ガーンと固まってるタフぼん、かっわいい~!おちこんだり、拗ねる猫はみたことありますが、がーんとしている猫ははじめてで、大笑いしてしまいました。
ほんと、猫ってそれぞれ性格があっておもしろいですよね。我が家は雄5匹ですが、みーんなそれぞれ違う味があるので、毎日笑わせてもらっています。

by ちぃこ 2015-11-20 12:09

私も、あの(ガーン)と固まった表情のタフぼんくんが大好きです。無条件に応援したくなります。昔、我が家にいた(クロ)鬼婆が何かの間違いで猫になったような容姿の子でした。ところが見た目とは正反対の可愛い子で、一度真っ白なイケメンくんに恋をして、見事に振られて、猫パンチをされて帰って来ました。一部始終を偶然見てしまい、可哀想だけど、笑ってしまいました。今頃、何処で美猫に又は美人に生まれ変わっていて欲しいです。

by ふみちゃん 2015-11-21 08:57

>ちぃこさん

オスのほうが、おマヌケで、純情で(単純ともいう)、わかりやすく、毎日笑わせてくれる材料いっぱいくれますよね。うちのケンジも、ビビりで笑わせます~ オス5匹とはにぎやかでしょうね!

by 道ばた猫 2015-11-21 09:16

>ふみちゃんさん

鬼婆が何かの間違いで・・・てクロちゃんに会ってみたかった(笑)。イケメン君に振られたのは、ざんねんでした。でも、猫の世界は、ニンゲンの美の物差しではないようですよ。オスは、顔が大きくて体臭がきつい猫がモテると聞きました。メスは、やはりフェロモンらしいです。

by 道ばた猫 2015-11-21 09:22