[猫ブログ] いろいろな連載と、ときどきお知らせ。

みにゃさま、こんにちは。

今回は、東京　阿佐ヶ谷で「猫と遊べる広島お好み焼きの店」として猫好きさんの間で人気の『猫の助』さんにお邪魔しました。



こちらで飼われている猫さんの「イチロー君（オス・4歳４ヵ月）」について相談があるとのことです。ご相談内容は以下です。

私（ママさん）がカウンター内で調理したり、外に買い物に行くなど、ちょっと側を離れると途端に怪獣のような声で鳴いて私を呼ぶため、うれしいのですが困ってもいます。

時にはくわえたぬいぐるみを振り回して「ウゥ～ウゥ～」とうなったりすごいのです。イチローは4年ほど前、保護猫からうちに来ました。こういう状態になったのは2年ほど前からです。お店には猫好きの方しかご来店にならないので、そのことでは特に問題はないですが、何を訴えているのか知りたいと思っています。

うちにはほかに１歳ほど年下の猫・茶太郎がいます。２匹はとっても仲よしで、以前、体格の大きな猫がお店に来て、茶太郎が怖がっていると、イチローが茶太郎を守るように立ち向かっていったりと弟分としてかわいがっているようです。

早速、イチロー君とご対面です。



表で話す私たち人間の会話を、定位置の棚の上（通称・社長室）で聞き耳を立てていたイチロー君。どっしり構えていて少々のことでは動じない、頼りがいのある性格だと一目で分かります。

近づく私を微動だにせずジロリと見て、あいさつを待っています。「初めまして、イチロー君。あなたとお話をしに来たの。」とお話しに来た事情を伝えると、
「ああ、そのこと。ふーん。」
と言い、くるりと背を向けてしまいました。話したくない、聞きたくない、うんざりといった様子です。

鳴き声のことは聞かず、「毎日の生活はどう？」と尋ねると背を向けてはいますが、「退屈」と一言ぶっきらぼうに言います。それ以上は言いたくないといった様子なので、イチロー君の普段の様子を見てみました。お外に出たくて、動きたくて、遊びたくて退屈そうであり、イライラもしています。



以前のイチロー君は外にも出入り自由でしたが、安全など考慮して２年前からお外に出すことを止めたそうです。イチロー君が大きな声で鳴くようになったのはちょうどそのころからです。

大声で鳴くまず１つ目の理由はお外に出れなくなったことです。「僕は外に出れないのに、僕だけ残してお外に出ていくお母さん。僕は外で他の猫や人とお話をしたり遊んだりできないのに、僕以外のお客さんと楽しそうに話すお母さん。」
お母さんは、お客さんにはイチロー君を外に出せなくなった事情を話していましたが、当の本猫イチロー君には何も伝えていなかったそうです。今からでも決して遅くはありませんので、外に出れなくなった理由と、お外に出せないのは仕方ないので、出してあげられなくてお母さんも辛い思いをしている、申し訳ないと思っているという気持ちを伝えることが必要です。

そして2つ目の理由です。
大声で鳴くイチロー君に困ったお母さんは、「この子は甘えん坊だからね～」とお客さんに言っていたそうですが、この言葉にイチロー君は傷つきました。

イチロー君は自分より弱い立場の者や、大切な相手は命がけで守る、強く勇ましく頼りがいのある男の子です。男の子としてのプライドもありますし、大好きなお母さんに勘違いされた上にみんなの前で傷つけられたと思っているのです。

常連さんの前でよく鳴くのは、イチロー君が甘えん坊だと思っているお客さんの前で鳴いているようです。

「僕は甘えん坊なんかじゃない！わがままなんて言ってないし駄々もこねてない！ なんで分かってくれないの？」と訴えていたのです。



まずはお母さんが勘違いしていたことをイチロー君に謝ります。そして、お客さんたちの誤解を解くと約束もして下さい。誤解を解く際、イチロー君に「誤解を解いている場を見せる」ことがポイントです。お客さんの前で「この子はいつも私たちを守ってくれて頼りがいのある強くて勇ましい自慢の子なのよ！」と少々大げさでも構いませんのでほめます。常連さんには、「私が勘違いしてたんだけど、本当は強くてね～」と改めてイチロー君を紹介するのです。

最後に３つ目の理由です。
気持ちの面での我慢もしてきましたが、イチロー君は元々運動量がたくさん必要なタイプです。人間と一緒で、猫にも運動が大好きなタイプとのんびり過ごすタイプの子がいるのは皆さんよくご存知ですね。

イチロー君は全速力で走ったりダイナミックにジャンプしたりと運動量が多く必要なので、運動不足のストレスも重なりました。本来は我慢強いイチロー君が大声で鳴くのはよっぽどのこと。私たちの想像以上に我慢に我慢を重ねてきた結果なのです。

普段の様子を見終わった後、「イチロー君はいっぱい我慢してきたのね。辛かったね。それでも強くて優しいイチロー君らしく皆を見守ってきたなんて、さすがイチロー君ね。」と伝えると、後ろ向きながらも少し恥ずかしそうに、そしてとても喜んでいるのが分かりました。



訪問後に「猫の助」のママさんから後日談をいただきました。

我が家のイチローですが、相変わらず退屈感はあるようで、ぬいぐるみをくわえては「うぅーーー。うぅぅーー！！！」と怪獣のようになるときもありますが、そのつど外に出られない理由を話すとすぐにやめて、以前のように激しく私に訴えることはなくなりました。

またわざとお客様の前で、イチローはたくさん運動しないと物足りない質で、甘えるような器の小さい男ではないこと。そして私たちを守る強い男であることなどを話しています。そういう話をしていると、その中心に座り込み、とても凛々しい顔をしています。
岩津さんのお陰で、イチローの気持ちがわかり、感謝の気持ちで一杯です。岩津さんが何気なく言われた「動物も家族ですから。」という言葉。当日は不在だった主人も、そして私の亡くなった父も、よく言っていた言葉です。

またいつかお会いできる日があれば幸いです。ありがとうございました。

ご家族みんなでどうぞ末永くお幸せに！