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[猫ブログ] いろいろな連載と、ときどきお知らせ。

道ばた猫日記

2015年02月24日

ひとつ屋根の下

エリコさんに抱っこされているのは、茶白のくるみくんと、キジトラのおとめちゃん。ともに、10カ月の元ノラ兄妹です。

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そして、おなじ屋根の下にもう一匹。兄妹のあとからエリコさんに保護された元ノラのこがおさん。推定2歳のキジトラです。

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無邪気でフレンドリーな兄妹と対照的に、こがおさんは、お客さんが来ると、こうしてトンネルの中などに、息をひそめて隠れてしまいます。外で散々怖い思いをしたのでしょうか。
じつは、くるみくんとおとめちゃんは、こがおさんが去年春に産んだ子どもたちなのです。
でも、エリコさんは言います。「お互いに親子だって気づいてないんですよ」と。

話は、去年の4月にさかのぼります。
エリコさんのお宅で長年飼っていた7匹の猫たちの最後の一匹が亡くなった頃に、どうかぎつけたのか、「この家は猫好き」とばかり、一匹の小顔のうら若いノラがご飯をもらいに訪ねてくるようになりました。こがおさんです。

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保護しようにも触ることさえできない用心深い子で、一歳になるかならないかの若さで、お腹が大きくなりました。
どこで産んでどこで育てているのかわからないまま、ご飯だけをエリコさんちに食べに来ます。

近くのお宅のガレージの奥で子育てをしていた、とわかった時は、すでに危機一髪。その家のご主人に見つかって、やっと目が見えたばかりといった仔猫たち3匹が「処分」のために段ボール箱に入れられていたのです。4匹いた仔猫の一匹はこがおさんがくわえて運び出したあとでした。

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間一髪で処分寸前の仔猫たちをもらい受けたエリコさん。まだ生後1か月くらいの仔猫3匹を育てるのは無理でしょうと、地域のボランティア「むさしの地域猫の会」がしばらく預かって育ててくれました。 「こがおさんは、3日間くらい子どもたちを必死で探し回って、鳴き声を聞くのがほんとうにつらかった」と、エリコさん。
3匹の仔猫たちは、ノラ生まれなれど、幼すぎてまだ人間への警戒心がなく、人間の手によって屈託なく育てられ、そのうちの一匹「げんきくん」は里親さんの元にもらわれていきました。

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残るくるみくんとおとめちゃんは、里親がみつからなければうちの子に、と思っていたエリコさんは、あまり積極的に里親探しをしなかったそうです。
ところが、母猫のこがおさんは手なづかないまま、3か月もたたないうちに、お腹がまた大きくなりました。また、どこかでこっそり産んでしまって子どもたちともども保護するのは至難のわざ。むさしの地域猫の会のアドバイスで、こがおさんを何とか保護して、家の中で産ませることに。玄関の中にご飯を食べに来るので、こがおさんが玄関に入ったら、ドアに結んだ紐を思いきり引っ張るという作戦で保護に成功。クローゼットのある小部屋を出産部屋として用意したところ、こがおさんはクローゼットの中で5匹の仔猫を無事産み落としました。

2回目の出産の子猫たち5匹はそれぞれいい里親さんがみつかって、今は、こがおさん、くるみくん、おとめちゃんの3匹がひとつ屋根の下で暮らしています。
くるみ・おとめ兄妹は、生後一か月で別れたお母さんを覚えていないはずです。こがおさんにしても、あれほど探し回った乳飲み子たちが大きくなってすぐそばにいるとは思いもよらぬことに違いありません。

「初めて対面させたのは、こがおさんの2回目の出産後一月半たった頃。こがおさんとおとめちゃんは女同士シャアシャアの応酬でしたが、猫にもフレンドリーなくるみくんは興味津々といった感じでした」と、エリコさんは言います。
その後、3匹はとくに問題なく一緒に暮らしています。こがおさんとくるみくんは、ときに、くっついて寝て、ちょっとグルーミングをしあう光景もあるのだとか。

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好奇心旺盛なくるみくんは、そこらじゅう飽かず探検し、布を食べてしまう癖があるので、布巾は台所に出しておけないそうです。

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おとめちゃんは、お兄ちゃんのくるみくんより一回り小さな女の子。お母さん譲りの美人さんです。

「こがおさんには、お外より安心できてゴハンの心配もない生活ができるようになってよかったな、と思ってほしい。くるみくんとおとめちゃんには、このまま、のびのびと気持ちよく暮らしてくれれば。あとは、親子3匹が、健康で長生きできるよう、お世話係ががんばるだけです(笑)」

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ひとつ屋根の下。
「あっ、この子たちは、私が最初に産んで、生き別れになったあの子たちだわ!」と、こがおさんが気づく日はくるのでしょうか。それとも、とっくに気づいてる、なんて、ふと思ったりします。
気づかないままでも、もちろん、3匹は十分にしあわせなのですけれど。

           ・  ・  ・

お知らせひとつ。
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写真

道ばた猫日記ライター紹介

佐竹 茉莉子(さたけまりこ)

フリーランスのライター。路地や漁村歩きが好き。町々で出会った猫たちと寄り添う人たちとの物語を文と写真で発信している。写真は自己流。著書に『猫との約束』『寄りそう猫』『猫だって……。』『里山の子、さっちゃん』など。朝日新聞WEBサイトsippoにて「猫のいる風景」、辰巳出版WEBサイト「コレカラ」にて「保護犬たちの物語」を連載中。

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カテゴリ: 道ばた猫日記
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みにゃさまのコメント

一番下の2匹の写真、ホントに同じ顔ですね 
そしてなんてうれしそうなんでしょう ネコのこんな表情見たことないです
信頼出来る人に抱かれて 幸せいっぱいって顔してますね~ (T_T)

おっさんの涙腺弱すぎて毎度泣きっぱなしです・・・

by FIGARO 2015-02-24 17:24

大きくなってからの、猫の保護が難しい理由の1つですね。そこに至るまでに色々あって、人間不信になってしまう成猫もいるし、でもきっと、こがおさんなら大丈夫。ゆっくり焦らず猫の歩みで…。


気が付いたら、親子仲良くエリコさんにデレデレに、なりますよ♪

by まるっと猫 2015-02-24 20:34

>FIGAROさん

この子たちは物心つくころに保護されたので、人間に甘えきった表情ですね~
おとめちゃんは、はじめ、「じゃじゃこちゃん」という名だったそうですが、「名前の通りになるよ~」と友人に言われ、「おとめちゃん」に改名したそうです(笑)。

by 道ばた猫 2015-02-25 01:27

>まるっと猫さん

こがおさん、安心して家猫になって、「おおがおさん」になったりして…(笑)。

by 道ばた猫 2015-02-25 01:31

最後の写真のおとめちゃんとくるみちゃんの何て良いお顔!!愛くるしいお顔です。愛されてます、って自信が出ていますね~(=^・^=)でも何という運命でしょう!こがおさん、我が子と一緒に暮らせるなんて・・・。一緒にいれるだけでも倖せ・・。でももし気がついていないなら、自分の子どもだっていう事に気が付いてほしいような・・。でもいつまでも仲良く一緒にいてくれれば一番ですね・・。

by りんりん 2015-02-25 07:20

くるみちゃん、おとめちゃん、とっても可愛いですね。無邪気でお目目真ん丸でw
こがおさんが最初に生んで、一匹くわえて運び出したという子も、今はどこかの里親さんに拾われているんでしょうか?

by なぁこ 2015-02-25 10:21

エリコさんと同じようにドアに結んだ紐を引っ張って親子猫3匹を保護して8年になります。同じことしている人がいた!と、とても感動しました。うちの母さん猫も、外の世界でとても恐い体験を忘れられないのか、いまだに懐いてくれずまるで家庭内野良猫なのです。2年前に他人猫♂が家族の仲間入りしてから少しだけさわらせてくれるようになりました。(どさくさに紛れて)幸せに思ってくれていると信じたいです。

by chachamaru5 2015-02-25 13:33

今も目の前で、こがおさんとおとめちゃんが、かくれんぼをして遊んでいます。くるみくんはそんな2匹を横目で見ながらも、ヒザの上で大音量のゴロゴロで満足そうなお顔。猫飼いには日常的なひとこまであり、ホッとする瞬間でもありますね。
こがおさんがくわえて運び出した1匹は、あちこち手をつくして探したのですが、とうとう見つけることはできませんでした(>_<) 今もその子のことは、本当に心残りなのですが、どなたか猫好きな方に保護して頂いて、幸せな猫生をおくっている、と思いたいです。

by ちるねこ 2015-02-25 16:15

今も目の前で、こがおさんとおとめちゃんが、かくれんぼをして遊んでいます。くるみくんはそれを横目に、ヒザの上でゴロゴロの大音量で、満足そうなお顔!猫飼いには日常的なひとこまですが、ホッとできる瞬間でもありますね。こがおさんが先に運び出した1匹は、あちこち手をつくして探したのですが、とうとう見つけ出すことはできませんでした。今もその子のことは本当に気がかりなのですが、どなたか猫好きなかたに保護されて、幸せな猫生をおくっている、と信じたいです。

by ちるねこ 2015-02-25 16:25

きっと、とっくの昔に3にゃんは親子だとわかってると思います。でもそんなことは当の猫さま達には関係無いんだとも思います。
猫さまはいつだって過去のことは忘れずとも今の運命を受け入れて懸命に生きようとしてると思うのです。
おとめちゃんとくるみくんのまん丸とした顔から大切にされてる幸せがあふれてますね。(^_^)

by 才蔵 2015-02-25 19:00

こがおさん捕獲の裏側に、そんなお話があったなんて…。

たとえ親子だと気づかなくても、ずっと警戒していた
こがおさんが、こうして自分の子供たちと幸せに
暮らせることが何よりだというエリコさんのお気持ちが
伝わってきて、ほっこり笑みがこぼれました。

捨て猫や、捨て犬、処分される動物たち、ペットショップが
なくなればいいなぁと思います。

by yaengel 2015-02-25 19:04

くるみくん、おとめちゃん本当に安心しきったイイお顔をしていますね。
大人のノラ母さん、捕まえるのは至難の業 その後逃げ出すこともなく親子で暮らしているんですもの、
エリコさんに抱かれている二人を見て、甘えたくなる日も近いはず(^^♪
ほんとに幸せそうだなぁ~*

by りょう 2015-02-25 20:07

こがお母さんの表情とは対照的に、子供たちの無邪気な顔^^こがおさんは、外で必死に子供を産み、育てたのでしょう、簡単に人には心を開かないのは理解できます。
それにしても・・ノラ猫が子供を産んだから処分だなんて、どうしてできるのでしょうか。
子育て中の動物を(別に子育て中ではなくても)、どうして見守ることくらいできないのかなぁ。
猫が嫌いな人がいるのはわかりますが、邪魔=処分って、本当に恐ろしいことだと気が付いてほしいです。

by ちぃこ 2015-02-25 21:07

>りんりんさん

たしかに、この兄妹、愛されている顔です。
猫って、可愛がられて安心すると、目が丸くなりますよね~。

by 道ばた猫 2015-02-26 01:13

>なぁこさん

エリコさんは、こがおさんが連れ出した子と一緒にご飯を食べに来るのを待っていました。あとをつけたり、探したりしたそうですが、見つからず。きっと誰かに保護されたと思うことにしたそうです。

by 道ばた猫 2015-02-26 01:17

>cyacyamaru5さん

きっかけがあるまで、懐けないタイプの猫って、けっこういますよね。
でも、少しずつ少しずつ、心を開いてくれるのが、たまらなくいじらしいですね!

by 道ばた猫 2015-02-26 01:22

>ちるねこさん

こがおさんが連れだした子猫は、きっときっとどなたかが大事にしていると、私も信じます。
また、こがおさん母子に会いに、遊びに寄らせてくださいね!

by 道ばた猫 2015-02-26 01:27

>才蔵さん

そうですよね、本当に!!
猫たちは、人間が思うよりずっと賢くて、けなげで、潔いです。出あったねこたち、みんなそうでした。

by 道ばた猫 2015-02-26 01:31

>yaengeruさん

捕獲機なしの保護のアドバイスや乳飲み子の預かりをしてくださった、むさしの地域猫の会は、市と協働のボランティア活動だそうですが、こんな活動がもっともっと各地に広まっていきますように!

by 道ばた猫 2015-02-26 01:38

>りょうさん

エリコさんは、結局、こがおさんの最初の子3匹、こがおさん、2回目の子5匹のおうちを見つけたってこと(猫友の大協力のもと)。ありがとうございます!

by 道ばた猫 2015-02-26 01:43

>ちぃこさん

出産部屋を用意してくれたエリコさんのこと、こがおさんは信頼してるはず。3匹揃って甘えん坊になる日も遠からず、の気がします。
邪魔・目障り=不用物の発想を、いのちに適用するなんて許されませんよね。

by 道ばた猫 2015-02-26 01:56

佐竹さんの写真、ねこへの愛を感じます。文章もやさしさにあふれていて素敵な記事でした。” 猫たちは、人間が思うよりずっと賢くて、けなげで、潔い" は私もまったく同意見。ねこに生き方を教えられています。

by るな 2015-03-08 00:46

げんさんは最近 おんぶ!をマスターしました。
かあちゃんがうつむいて本を読んでいると背後から首筋に飛びついてぶら下がってきます。
立っていてもクビめがけて飛んできます。

狩られているのでないですよね?
爪出てないですし。

げんさんの腕白ぶりとくるちゃんの活躍ぶりを見て、離れていても兄弟だと感じました。

by Kiberry 2015-03-10 22:34

>Kiberryさん

おお、げんき君のお母さま!
かあちゃんの首にぶらさがってくるですと?
なんて、甘ちゃんで、楽しそうなんでしょう!
げんきくんにも会いたいです!

by 道ばた猫 2015-04-05 01:02

朝の番組0655に、出演くるみさん!ていうので、注目しましたが。。。
え、俺でなく、あたし?  よそのねこさんだったようです。

by tossy 2015-04-21 18:12

>tossyさん

うふ。違う胡桃さんでしたか。でも、くるみくんの愛らしさとフレンドリーさは、あの報道番組の看板猫にで採用されてもおかしくないレベルと思うのですが・・・・。

by 道ばた猫 2015-05-07 00:55