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[猫ブログ] いろいろな連載と、ときどきお知らせ。

道ばた猫日記

2014年11月25日

八の字ひげの女の子

お鼻の下に八の字の黒ひげがご愛嬌の、さび猫の女の子。ある住宅地でノラの父さんと母さんの間に生まれた子です。こんなビビり顔をしているのは、里親探しのために保護されて、「おうち」というものの中に初めて入ったから。

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保護したのは、猫日記「6番目の子」でご紹介したリ ュウくんのお母さん、アズミさんです。
アズミさんは、ご近所の庭に住み着いている「おっさん」と美人妻「ミケ子さん」との間にこの夏生まれた4匹の子猫たちの行く末を案じ、おうちを見つけてあげようと決心しました。そして、保護活動の先輩の協力を得て悪戦苦闘の末、まったく人馴れしていない子猫たち4匹を保護したのです。

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4匹の父親であるおっさんは、極道っぽく見えて、じつはビビリの男。さびちゃんの困り顔はお父さん似のようですね。そばにいるのは、愛妻ミケ子さんが去年産んだ娘のシロ子ちゃん。この子もお父さん似のようです。

一方、子どもたちの母親ミケ子さんは、スレンダーで気の強い美人です。「ニンゲンに 気を許すんじゃないよ!」と子どもたちにしっかりノラ教育しています。

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おっさんとミケ子さんは仲睦まじく、ふたりの子育ての情景はそれはそれは微笑ましいのですが、住宅地ですし、このままおっさんファミリーが増えていって切ない思いをさせては・・・と、ご近所さんとも相談の上、子猫4匹の保護と、おっさん夫婦やシロ子ちゃんの避妊去勢手術に乗り出したのでした。

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両親と引き離すことに心痛みながら、アズミさんが保護した子猫は、茶トラの男の子、うす三毛の女の子、茶白の女の子、さびの女の子です。「里親が見つからなかったらどうしよう...」という大きな不安を抱えての保護でした。 「なかでも、このさび猫はゼッタイに売れ残るだろうなあ」と、アズミさんは思いました。だって、こんな八の字ヒゲがあるし、きょうだいのお尻に隠れる一番のビビりだし。

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嬉しいことに、まず、うす三毛と茶白の2匹が同じおうちにもらわれました。残るはさびの女の子と茶トラの男の子。
続いて、友人のつてで「4か月くらいの女の子がほしい」というおうちが現れます。模様も性格も器量もいっさい問わないという電話での申し込みなので、さびちゃんを送り出すことに。アズミさんのだんなさまは「こんな器量の悪い子でほんとにいいのだろうか」と思わず口走ってしまったそうです。
アズミさんはというと、嬉しさ半分 、寂しさ半分の気持ち。このさび猫のことを、「誰が何といおうと、この子はとってもカワイイ」と思っていたのです。残ったらうちの子にしてしまおうともひそかに企んでいました。

さびちゃんがもらわれていったのは、シノダ家。待ち構えていたお母さんの第一声は「かわいい~~~!!」でした。
シノダ家には先住猫で、さびちゃんと同じ4か月くらいの月ちゃんというべっぴんさんがいます。

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月ちゃんは、シノダ夫妻が遠くの町を車で走行中、交差点脇で必死に鳴いていた子猫2匹の1匹。「あんな鳴き方をしている子猫をそのままになんかできない」と旦那さま。近くのコンビニで猫餌を飼い、戻ってきて月ちゃんは保護したのですが、もう一匹は逃げてしまいました。

きょうだい離れ離れは可哀そうと、夫妻はその後3度も、遠くのその町にでかけ、あたりを探し回ったり、近隣の人に尋ねたりしたのですが、見つかりませんでした。それで、その子もきっと誰かに拾ってもらったのだとあきらめることにし、月ちゃんが寂しくないように、きょうだいになる女の子を迎えることにしたのでした。

こうしてもらわれてきたさびちゃんは「花ちゃん」という愛らしい名をもらいました。が・・・ビビりの花ちゃんは、押入れのなかに立てこもり。
お母さんは、押入れの中にベッドもごはんもお水も置いて、花ちゃんのお城にしてやりました。
「花ちゃん、あそぼうよ~」という月ちゃんの誘いで、1週間で押入れ籠城から出 てきた花ちゃん。今では、最初っからの姉妹のように何をするにも一緒の月花コンビです。

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現在の花ちゃんは、たっぷりと愛されている家猫としての自信がついたせいか、八の字ひげがますますよく似合います。生後4か月にして、文豪漱石先生に負けないくらいの哲学的な風格さえ漂っています。 器量が悪いなんて誰が言ったのでしょうね?

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さて、おっさんたちのその後というと・・・。無事3匹の手術も終わり、おっさんは「ケンさん」というカッコいい新しい名前をもらって、相変わらず、ミケ子さんとシロ子ちゃんと仲睦まじく暮らしています。犬小屋のマイハ ウスもあって、地域猫としての平和な暮らしが約束されています。
アズミさんちに最後に残ったキジトラの男の子も、最初の2匹をもらってくれたおうちのお嬢さんが「1匹だけ残った子がかわいそう」と言いだし、なんときょうだい3匹とも迎えてくれました!

「ニンゲンが勝手に手術をしたり、母猫から子猫を取り上げるのが、ほんとうに猫たちのしあわせになるのかしら。とても酷いことをしているのでは」という迷いが終始つきまとったアズミさんの初めての保護活動。「思い切ってやってよかった!」という、うれしいうれしい結末になりました。
(アズミさんのブログ『タオと猫の庭』の「オッサン一家のものがたり」「子猫のものがたりの結末」には、初めての保護活動の心の軌跡が綴られています。あわせてぜひご覧ください)



写真

道ばた猫日記ライター紹介

佐竹 茉莉子(さたけまりこ)

フリーランスのライター。路地や漁村歩きが好き。町々で出会った猫たちと寄り添う人たちとの物語を文と写真で発信している。写真は自己流。著書に『猫との約束』『寄りそう猫』『猫だって……。』『里山の子、さっちゃん』など。朝日新聞WEBサイトsippoにて「猫のいる風景」、辰巳出版WEBサイト「コレカラ」にて「保護犬たちの物語」を連載中。

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カテゴリ: 道ばた猫日記
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みにゃさまのコメント

アズミさんのブログも拝見しました。
4匹みんな幸せになってよかったです~*
困り顔のおっさんもケンさんなんて素敵な名前をもらって、落ち着いた暮らしが出来てる~~!
こんな嬉しいお話、久しぶりにやって来たのに知ることが出来て すご~くラッキーです。

by りょう 2014-11-25 17:33

アズミさんのブログも拝見しました。
4匹みんな幸せになってよかったです~*
困り顔のおっさんもケンさんなんて素敵な名前をもらって、落ち着いた暮らしが出来てる~~!
こんな嬉しいお話、久しぶりにやって来たのに知ることが出来て すご~くラッキーです。

by りょう 2014-11-25 17:47

花ちゃんの口髭、可愛いですね~。どの子もおっさん(この呼び名のほうが似合っているような(笑))とミケ子母さんのいいとこを受け継いでいますね。二人の最後の子供たちがこの先も末永く幸せに過ごしますように。おっさん親子も安心して暮らせる環境で、本当に良かった!
アズミさんの迷いはよく分かります。私もいつもそうですから。でも、その迷いは決してなくさないよう、忘れないようにしたいとも思っています。

by ちぃこ 2014-11-25 22:18

>りょうさん

おっさん一家のものがたりは地域の善意に包まれて、ハッピーエンドでした。こんな地域ばかりだと、うれしいですね~

by 道ばた猫 2014-11-26 10:01

>ちぃこさん

私も,おっさんのほうが似合ってると思います(笑)。そして、迷いを忘れないように、というのも同感‼「猫はこう思ってるに違いない。こうしてやったら幸せ」とのみ思い込むのはニンゲンの傲慢を招く部分もありそうですね。

by 道ばた猫 2014-11-26 10:06

一緒に暮らしていると ほんとうの家族になっていきますね ♪
にゃんげんも 猫たちも ~☆
ぬくぬく ~ (^^♪♥

by ruineko 2014-11-26 11:56

私、S家の父親の方でございます。
この度は、ウチの子たちを素晴らしい記事にしていただき、
まことにありがとうございます。

毎週、こちらのブログを拝読するのを、とても楽しみにしておりますが、
まさか、我が家を載せていただくとは、夢にも思いませんでした(笑)

毎日、私たち夫婦をはじめ、多くの皆さんを癒してくれている、
かけがえの無い存在である月と花は、
実は、これまでのさまざまな方の善意やご厚意により、
今日、我が家で幸せそうに暮らしていることに、
あらためまして、思いを馳せさせていただきました。

道ばた猫さんやあずみさん、ruinekoさんをはじめとする皆様に、
心より御礼を申し上げますとともに、
一匹でも多くのにゃんこたちが、愛し愛され、幸せになります事を、
この子たちの寝顔を見つめながら、願っております。

大変に、ありがとうございました!

by しろくま1124 2014-11-27 01:17

茉莉子さん、ケンさん一家の物語をありがとうございます。
夏の日の不安と迷いと喜びと安堵、いっぺんに戻ってきて、
胸が熱くなりました。
本当にみんなで力を合わせて乗り越えた夏でした。
皆様のコメントで、さらにこみあげるものがありました。
ありがとうございます。

世の中捨てたものじゃないな。
里親さんになってくださった
Sさん一家kさん一家、、どちらも本当に素敵な「にゃんげん」仲間です。
いい人はいっぱいいる。
そのことに気づけただけでも、幸せです。
ruinekoさんや友人たちにははるかに及ばないけれど
これからも自分にできることをして行きたいです。
大きくなった花ちゃん、かわいいよ!!

PS:お散歩に行くとケンさん、みけ子さん、シロ子ちゃんが
仲良くひなたぼっこしてるのを見かけます。
とても、しあわせそうです。

by あずみん 2014-11-27 15:59

>ruinekoさん

 猫たちの「受容」度には、見習いたいことがいっぱい。
 猫って、ほんとに大した生きものだと思います!

by 道ばた猫 2014-11-28 04:07

>しろくまさん

「あんな鳴き方をしている子猫をそのままにできない」という言葉、猫好きの鑑だと思いました! 月ちゃん花ちゃんをよろしく。また会いに行きます。

by 道ばた猫 2014-11-28 04:11

>あずみんさん

ケンさん一家のしあわせそうなひなたぼっこ姿こそ、この夏頑張りぬいたアズミさんたちへのごほうびですね~ みんなができることをまず一歩。改めて思いました。ありがとう。

by 道ばた猫 2014-11-28 04:14