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[猫ブログ] いろいろな連載と、ときどきお知らせ。

道ばた猫日記

2014年11月11日

幸せをつかむまで その③ 「地味猫」

アサミちゃんの腕のなかで安心しきった表情で甘えているのは、みきちゃん。2歳半の黒猫の女の子。控えめで優しい子です。

nekoblog207_1_アサミちゃんとみきちゃん①.jpg 

みきちゃんは、河川敷の小屋でホームレスの男性に可愛がられていた黒猫一族の1匹。後をついてきた1匹の猫の面倒をそのかたが見始めて、いつしか十数匹にまで増えてしまったのだそうです。猫たちと住んでいた小屋が壊されるとの情報に、市内の地域猫愛護員のかたたちが連携して猫たちを一斉保護しました。みきちゃんは、もう1匹の黒猫と共に保護猫ラウンジ猫の館MEにやってきたのですが、当時はまだ1歳くらいの女の子で、移動の際、怖くておしっこをちびってしまったビビりちゃんでした。

猫の館にやってきて、「ミキティ」という可愛い名をもらいましたが、お客さんに甘えたり、自己アピールしたりすることのない、ひっそりとした地味猫でした。

nekoblog207_2_猫の館時代・食事風景.jpg

右側、奥から2番目の、赤白のシュシュをつけているのが彼女です。当時の館はなぜか黒っぽい猫が集まっていた時期で、黒猫は見分けがつきにくいうえに、活発な甘え上手の猫の陰で、ミキティはまるで目立たない存在でした。よくよく見れば、こんなに賢そうないい顔をしているのですけどね。

nekoblog207_3_猫の館時代・アップ.jpg

里親が見つからないまま、半年が過ぎ、猫の館に立ち寄ったのが、アサミちゃんとお母さん。どんぐりちゃんという雄の茶トラの先住猫がいて、その相棒となる2匹目を迎えたいな、と思ってのことでした。

どんぐりちゃんは、2年前、交通事故に遭い、交差点そばで頭や鼻から血を出して倒れていた子猫でした。出勤途中に見つけたお母さんがもう死んでいると思い、せめて道の端に寄せてやろうと思って抱え上げようとしたら、痙攣しながら「ミャッ」と小さく鳴きました。病院では、「首の脱臼、脊椎損傷、小脳損傷」というあまりの重傷で安楽死をすすめられたそうです。

nekoblog207_4_どんぐりちゃん.jpg

でも、どんぐりちゃんの生命力に賭けたお母さんは、半身不随でも一生面倒を見ようと覚悟を決め、体力が戻るとせっせと体を動かしてリハビリに励んでやり、いまでは、高いところに登れない意外はとくに不自由のない体に回復しています。そんなどんぐりちゃんがもっと活発に楽しく日々を過ごせる仲間になってくれる猫は・・・・と、お母さんが館の猫たちを見回していると、いつのまにか、アサミちゃんの膝の上に黒猫が乗って甘えているではありませんか! ミキティです。

ミキティは、アサミちゃんの膝でスヤスヤと眠ってしまいました。ミキティはお客さんにはまず寄って行かないし、そんなふうに心を許した光景を見て館のスタッフもびっくり。

「これはもうこのコしかいないと思いました」と、お母さん。
こうして、ミキティはもらわれて「みきちゃん」となったのですが・・・・どんぐりちゃんはみきちゃんを受け入れず、シャアシャアフーフー殺気立った毎日。でもいずれは・・とのんびりかまえていたところ、ひょんなことで仲良くなったふたり。きっかけは、引っ越しでした。

引っ越した当日、不安さに鳴いていたみきちゃんのもとへ、どんぐりちゃんがささっと駆け寄って「大丈夫だよ」とばかりに鼻をくっつけたのです。以来、同じ座布団でくつろいだり、寝ているどんぐりちゃんをみきちゃんがそっと毛づくろいしたやったり・・・。引っ越しが、2匹を同じスタートラインに立たせ、運命共同体の意識を持たせたのでしょう。

nekoblog207_5_みきとどんぐり.jpg

今では、みきちゃんのほうがお姉ちゃんぶっていて、どんちゃんはみきちゃんのすることをなんでも一緒にしたがるのだそうです。みきちゃんとの追いかけっこのおかげで、どんちゃんも3段タンスに飛び乗るまでになりました。 「どんぐりがうちにきたのも、出会いから。みきとの出会いもアサミが見つけてくれた。2匹とも、大事な大事な家族です」と、お母さんは言います。アサミちゃんの気持ちは、聞かなくても、みきちゃんを大事そうに抱いてる手つきでわかりますね。

nekoblog207_6_アサミちゃんとみきちゃん②.jpg

みきちゃんの元の飼い主のホームレスさん(病気を治して退院なさったとか)も、今のみきちゃんの幸せをさぞ喜んでいらっしゃることでしょう。

猫の魅力はほんとうに、1匹1匹それぞれにあります。地味猫には地味猫の、じわ~~~とくる魅力が。そんな猫が甘えてくれた時の嬉しさは格別。
館では、福島の帰還困難区域で保護された、何とも個性的な顔のワルツくん(サバ白)やちょいワル風だけどじつは甘えんぼポンちゃん(長毛茶トラ)ほか、それぞれに味わいのある猫たちが、今日も出会いを待っています。

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写真

道ばた猫日記ライター紹介

佐竹 茉莉子(さたけまりこ)

フリーランスのライター。路地や漁村歩きが好き。町々で出会った猫たちと寄り添う人たちとの物語を文と写真で発信している。写真は自己流。著書に『猫との約束』『寄りそう猫』『猫だって……。』『里山の子、さっちゃん』など。朝日新聞WEBサイトsippoにて「猫のいる風景」、辰巳出版WEBサイト「コレカラ」にて「保護犬たちの物語」を連載中。

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カテゴリ: 道ばた猫日記
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みにゃさまのコメント

猫の館で誰かの大切な子になるご縁を待っているんですよね。
みんにゃに来い来い、素敵なご縁
我が家にもご縁で繋がった二にゃんいます。
笑い顏と困り顏の絶えな毎日で幸せですよー。

by くま 2014-11-11 12:53

我が家とその猫界隈にも「まるでレールが敷かれていたかのよえに」あれよあれよとうちの子になったニャンズが居ます。
仲良しの姉妹猫の片方だけ里親決まって、後の子を迎に行く予定が何故か前日キャンセル入って、結局両方同じ家の子になれちゃったりとか(笑)。net猫友さんたちの間ではそういう時は猫神様に仕える組織、猫配置適正委員会が仕事したと言っています(笑)

by むぅきち 2014-11-11 19:28

地味猫ちゃん、みんな素敵な赤い糸で繋がっていたんですね、本当に良かった。
猫ちゃんが心開いてくれるのって幸せですよね

私は譲渡会で固まってそそうしてしまう子をうちの子にしましたが、半年経っても抱くこともできません。
撫でさせてはくれますが、気の向いた時に・・。
後は、ダダっと逃げられます、未だに。
懐いちゃった猫ちゃんだけでない話ってありますか?
幸せな皆さんを見ていると、ちょっと寂しくて涙が出てしまいました。
後から拾った子は、ベタ慣れで、先住ちゃんとも大の仲良しになってくれましたが、最近、先住の真似?なのか、抱っこを嫌がるようになり・・・飼い方悪いのかと
ずうっと猫を切らしたこと無かったのに・・不安になる毎日です。

そんな猫ちゃん話、聞きたいです。
いつかはお膝に来てくれるのか
一生、抱っこはいやにゃのよーなのか・・・

by わっくみー♪ 2014-11-11 20:38

わっくみー様、うちの子も抱っこ嫌いですよ(^^;
撫でたり、腰トントンはしてーとねだってきますし、添い寝はしてくれますが、膝に乗ったり、お腹に乗ったりもしてくれません。
べったり甘えたさんの猫さんの様子をブログで読ませてもらうと、ちょっとうらやましい時もありますが、その分たまにゴロゴロ添い寝してくれる時はとても幸せです(*^^*)

by ピーチまま 2014-11-11 21:48

わっくみー様、うちの子も抱っこ嫌いですよ(^^;
撫でたり、腰トントンはしてーとねだってきますし、添い寝はしてくれますが、膝に乗ったり、お腹に乗ったりもしてくれません。
べったり甘えたさんの猫さんの様子をブログで読ませてもらうと、ちょっとうらやましい時もありますが、その分たまにゴロゴロ添い寝してくれる時はとても幸せです(*^^*)

by ピーチまま 2014-11-11 21:49

>くまさん

笑い顔と困り顔の絶えない日々・・・退屈しませんね~~。 誰かの大切な猫になれなかったコも、みんなの大切な猫にしたいですね!

by 道ばた猫 2014-11-11 23:37

>むぅきちさん

わあ、猫配置適正委員会がんばってるんですね! たいへんだろうけど、いい仕事いっぱいいっぱいしてほしいな。

by 道ばた猫 2014-11-11 23:41

>わっくみーさん

うちの元のら菜っ葉ちゃんなんて1年触らせず、膝の上は3年たったこの頃ようやくですよ。そんな子がある日、何を思ったか甘えてくるのが、猫飼いの醍醐味。それに、いつまでたっても甘えない子は、それはそれで《あっぱれ!》だと思って、いつか懐く日を楽しみにしてください!

by 道ばた猫 2014-11-11 23:47

>ピーチままさん

母の家の『おじさん』という名の元ノラは、かれこれ3年ご飯をもらっているのに、ゴロゴロ言ったのはほんの2~3回。そのときは嬉しさ極まりました!から、ま、いいか。

by 道ばた猫 2014-11-11 23:52