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[猫ブログ] いろいろな連載と、ときどきお知らせ。

岩津さんに聞く!

2014年11月07日

「アニマルコミュニケーター 岩津さんに聞いてみよう」 ~老犬ルーム訪問記~

みにゃさま、こんにちは。
今回は、「フェリシモの猫基金」、フェリシモメリーポイントの「動物たちの保護と飼い主探し支援」、毎月ひと口100円「フェリシモわんにゃん基金」等でみにゃさまからご支援をいただいている団体のひとつ『認定NPO法人 日本アニマルトラスト』さまを岩津さんと訪問しました。

アニマルトラストさんは、大阪府豊能郡能勢町の山の中にある動物の孤児院「ハッピーハウス」を中心に、 行き場のなくなった動物のケアや治療などを行い、 新しい飼い主さんの募集を呼び掛けている日本でも有数の団体です。犬猫合わせて約600頭(!)が熱意あるスタッフさんやボランティアさんのお世話の元で暮らしています。

新しい飼い主さんに巡り合えるのはやはり若い子が多く、歳を取れば取るほど難しくなったり、あるいは飼い主さん自身も高齢で飼えなくなったために引き取られる老犬もいます。アニマルトラストさんでは終生飼育を基本理念にしているので、年齢を重ねて身体が思うように動かない犬たちは「老犬介護ルーム」という別の建物でお世話を受けることになります。室内は清潔に保たれ、床ズレができないよう姿勢を変えてもらったり、シャンプーしてもらったりと充実したケアを受けられます。私たちが訪問した日はおよそ15頭ほどが暮らしていました。

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介護ルームでは老犬たちが思い思いに時間を過ごしていました。寝たきり、痴呆、全盲、おむつ・・・必要な介護は多岐に渡ります。老犬たちの醸し出す雰囲気で、ここではゆったりと別のリズムで時が流れているかのようです。

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スタッフの方にご紹介いただいたのは2匹の老犬でした。今回は猫ではなく犬とコミュニケーションしたお話です。


(以下、岩津さん)
介護ルームに案内され、「最近この子がよくしゃべるんです。」と紹介されたのが、黒いラブラドール犬のマーヤちゃん 推定13歳。
すでに足腰が弱り、寝たきりです。皮膚病も患っているため、かゆそうに顔を毛布に擦りつけています。
私たちが近づくと、頭を起こして何やら必死に訴えかけています。

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「マーヤちゃん、どうしたの? お肌がかゆくて辛いね。痛みはない?」と話しかけると、「私は大丈夫だから。それよりお父さんとお母さんは大丈夫なの? 今どこにいるの? お願い、会わせて。一目でいいの。ねえ、お願いよ!」と悲痛な表情で言いました。

マーヤちゃんは飼い主さんの病気のため、3年前にアニマルトラストさんに引き取られました。自分がなぜここにいるのかを理解しており、もうおうちに帰ることはできないというのも知っています。でもせめて自分の目が見えるうちに、愛する飼い主さんの無事をその目で確認したいのです。スタッフの方によると、今現在、飼い主さんとは残念ながら連絡が取れない状況とのことでした。

どう伝えるのが最善なのか悩みましたが、「会いたい」と心から願う高齢のマーヤちゃんに、曖昧な言葉は必要ないと感じ、連絡が取れないという真実を伝えた方がいいのではないでしょうか?とスタッフの方にご提案しました。

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真実を伝えても、愛する人に会いたいという気持ちは変わらないかもしれません。悲しみにくれるかもしれません。しかし、スタッフの方にもどうにもならないという現実が分かると、「何で会わせてくれないの? なんでこの思いを分かってくれないの?」という人間に対する疑問や不信感は無くなり、少しでも心が軽くなるかもしれません。

自分の最期が近づいてなお、飼い主さんのことを一心に想うマーヤちゃんの優しい気持ちに涙がこぼれました。



マーヤちゃんの隣で横になっていたのが、MIX犬のドルちゃん、20歳。もう高齢のため脚が立たず、目も見えません。
ご挨拶するとすぐに、「ねえ、私、また走れるようになるかしら?」と目を輝かせて言いました。

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私は驚き、「え?」と聞き返すと、「天国って知ってる?天国に行ったら走れるようになるのよね?」とうれしそうにお話するのです!

「そうよドルちゃん。天国はあるし、天国に行ったら、また好きなだけ走ったり跳んだりできるのよ。」と伝えると、まるで駆けているかのように前足を動かし、喜びました。

おそらくパッと見には生きてるのかさえも分からないような子ですが、こんなにも豊かに思考し、死を穏やかに受け入れて暮らしているのです。此岸と彼岸の境目で暮らしているドルちゃんには、風格すら漂っていました。

介護が必要になった老犬たちは、「お世話になって申し訳ない。今までできていたことができなくなって情けない、悔しい。」という気持ちでいっぱいの子もいました。目が見えないため、壁にぶつかりながらも歩き続けている子がいたのですが、自分にできることはないかと常に考えていました。スタッフの皆さんの愛情が犬たちに伝わっているからこそ、みんな、「申し訳ない。役に立ちたい。」と思っているのです。

シェルターでは、日々のお世話が愛情です。健康で清潔、可能な限り快適に過ごせる環境を維持し、次へと繋ぐ。責任と覚悟を持って命を預かっているスタッフさんたちには本当に頭がさがります。どうもありがとうございました。

犬でも猫でも命あるものすべて、若い子も老いた子も、みんな温かい心を持っています。
動物と接するときにはどうか忘れないでほしいなと思います。



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日本アニマルトラストのスタッフさまよりメッセージをいただきました。

先日はご訪問ありがとうございました。
マーヤが元のお家に帰って元の飼い主さんに会いたいと思っていることを聞き、少し胸が痛みました。元々、誰かに飼われていた子は皆きっとお家に戻りたいでしょうし、飼い主に会いたいと思っているだろうといつも思っています。

新しい家族に巡り会えた子は第2の人生(?)を踏み出す事ができますが、ここで生涯を終える子はずっとそういう思いを持っているのかもしれません。

マーヤは優しい子です。元々の飼い主さんを心配しているなんて。飼い主さんに会うことは叶いそうにありませんが、私たちが出来ることは精一杯してあげたいと思います。
本当にありがとうございました。






次回は、11月21日(金)の更新予定です。お楽しみに!


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アニマルコミュニケーター岩津さんに聞く!

岩津 麻佳

2014年、ひょんなきっかけからアニマルコミュニケーターとしての活動を開始。落ち着いた語り口と外見からは裏腹に、動物たちのエピソードを時にユーモア交えて語ってくれます。

HP

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みにゃさまのコメント

ううう~、泣けました。
動物も天国のこととか考えるのですね。
最後まで介護してくださるスタッフの方にも頭が下がる思いです。

by しましま 2014-11-07 15:55

動物でも思うことはみんな一緒ですよね・・・。お世話していただいてるスタッフさんもきっと心を痛めながら介護してらっしゃるんでしょうね・・。一生懸命生きている子達・・頑張れ・・なんて簡単には言いたくないけど、心安らかに時を過ごしていってほしい・・です。

by りんりん 2014-11-07 18:51

>しましま様
嬉しそうに天国の話をするドルちゃんに驚きました!
スタッフの皆さんが愛しさを心に、お世話しておられるのが伝わってきましたよ。

by 岩津 2014-11-08 12:00

>りんりん様
私たち人間と気持ちは同じですね。
スタッフの皆さんはすべてを受け止めてお世話されており、感謝の気持ちでいっぱいになりました。

by 岩津 2014-11-08 12:03

私の職場(介護施設)も『ハッピーハウス』なんです。今回の話も涙が出そうになるのを堪えるので精一杯でした。穏やかな最後を迎えるために行なうことは誰でも一緒なのですね。

by ジジ 2014-11-08 23:58

>ジジ様
しあわせな最期を過ごす為のお手伝いをされてるのですね。
「ハッピーハウス」、尊厳としあわせのある毎日をお手伝いされているジジさん、アニマルトラストの皆様に頭が下がります。

by 岩津 2014-11-10 10:42