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[猫ブログ] いろいろな連載と、ときどきお知らせ。

道ばた猫日記

2014年07月15日

ミカコちゃんのおとうと

 6月のある朝、保育園に行く支度をしていたミカコちゃんに、お母さんが言いました。
「ミカちゃんが保育園から帰ってきたら、子猫ちゃんが2ついるからね。楽しみにしていてね」
昨日の夜まで、お母さんはそんなことひとつも言わなかったのに、もうミカコちゃんはびっくりです。
「男の子?女の子?」
「男の子だよ、楽しみにね」

保育園から勇んでミカコちゃんが帰ってきたら、お母さんの言ったとおりでした!
「かーわーいーいー!」

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「この子たち、今日から、うちの子になったの。ミカちゃん、やさしくお姉ちゃんしてあげてね」
「うん!」
 2匹は、神妙な顔つきで、「おねえたん、よろちくお願いしまちゅ」と言ってるみたいにちょこんと座っています。2匹とも、鼻先がシミっぽいのがなんだか笑えます。ミカコちゃんの家には、ミカコちゃんが生まれる前から「おかゆ」という茶白の猫がいますし、去年まで「おはぎ」という大きな黒猫もいましたが、こんなちっちゃな猫は初めてです。

 1匹は白っぽくてやさしい顔をしていて、もう1匹は黒っぽくてちょっと情けないような顔をしています。もうすぐ5歳になるミカコちゃんはひとりっ子なので、いっぺんに尻尾のあるおとうとがふたりもできて、うれしくてたまりません。抱きしめると、ふわっふわで、いい匂い!

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 ーーーじつは、子猫たちが家にやって来るなんて、ミカコちゃんのお母さんも昨日まで夢にも思っていなかったのです.。.
 その日の朝、ミカコちゃんがまだ寝ている時間に、お母さんが早朝マラソンをしていると、ケイタイにメールが入りました。友人からです。
「夜明けからずっと外で子猫の鳴き声が聞こえて・・・・たまりかねて2匹を保護しちゃった。近所の人の話では、前の日にビニール袋で捨てられてみたい。どうしよう・・・」
 友人は猫を2匹飼っていますが、ひとり暮らしでもうこれ以上飼える状況ではなく、これから仕事に行かなくてはいけなくて、切羽詰まっての相談でした。
「連れてきて。ミカコを保育園に送った後、一緒に獣医さんに行ってひとまず診てもらおう」
「ありがとう! でも、そのあと、どうしよう?」
「うちでもらうよ」
ミカコちゃんのお母さんが家に戻ってそう返信するまで、ほんの2~3回のこんなやりとりだったといいます。

 それにしても、なんという決断の速さ。ミカコちゃんのお母さんはこう言います。
「まず、困ってる友人を助けたい気持ち。それから、実家では母が捨て猫を拾って拾って今も6匹飼ってて、うちなんて今1匹だから、まだ余裕がある、と。そして、猫がいる生活は楽しいってわかってるから、ミカコのためにも子猫を育てていくのはいいんじゃないか、と。その3つの気持ちから、エイッと決めました。こういうのは、足元に空から降ってきたようなものだから。降ってきたら拾うしかない(笑)。夫も『反対はしないよ』と言ってくれたので」
 なんて、すがすがしいプラス思考でしょう!

 拾われたときは、目はぐじゅぐじゅ。最初は、チュッチュッと吸いつくことしか知らず、鼻もつまるほど顔中キャットフードだらけにしていた2匹ですが、食べかたもすぐに上手になって、みるみるふっくらしてきました。それにつれて、日々やんちゃぶりを発揮。布団で一緒に寝てやったお母さんは、足の指をガジガジ噛まれっぱなしでした。

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 やってきて3週間。ずいぶん大きくなりましたが、それでも、おじいちゃんが外国旅行のお土産で買ってきてくれたカワウソ人形と同じくらいの大きさ。2匹してチョロチョロしまくって、ミカコちゃんのスカートの下にもぐりこんだり、絵本をかじったり、絵本棚の後ろに探検に出かけたり。あーあ、転がしてあったアンパンマンのお面の中にウンチをしちゃったのは、いったいどっち?

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 そうしてさんざん遊びまわっていたかと思うと、まるでゼンマイが切れたみたいに、安心しきってコテッと寝てしまうのです。ミカコちゃんのお気に入りの大きなビーズクッションの上が、2匹のお気に入りのベッドです。

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 きょうだいがやって来たばかりのとき、お母さんに「2匹の名前考えて」と言われ、ミカコちゃんは一生懸命考えました。そうしてつけた名前が、白っぽいほうが「ミルク」。黒っぽいほうが「ココア」。ココアのほうがちょっとだけ大きくて、よりやんちゃそうな顔なのに、取っ組み合いごっこではミルクに負けています。先輩猫のおかゆは、闖入してきたちびっこたちにビビッて、2階から様子見状態ですが、きっとそのうち、仲良くなることでしょう。

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 赤ちゃんの時は黒猫おはぎに子守りをしてもらって大きくなったミカコちゃんが、今は、子猫たちの面倒を見るいいお姉ちゃん。
ミカコちゃんのお母さんは、お母さん(ミカコちゃんのおばあちゃん)が捨て猫をみるとほっておけないのをずっと見てきた人。

 「慈しむ気持ち」って、こうして順番に伝わり、廻っていくのですね。ミカコお姉ちゃん、やんちゃなおとうとたちをよろしくね!

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写真

道ばた猫日記ライター紹介

佐竹 茉莉子(さたけまりこ)

フリーランスのライター。路地や漁村歩きが好き。町々で出会った猫たちと寄り添う人たちとの物語を文と写真で発信している。写真は自己流。著書に『猫との約束』『寄りそう猫』『猫だって……。』『里山の子、さっちゃん』など。朝日新聞WEBサイトsippoにて「猫のいる風景」、辰巳出版WEBサイト「コレカラ」にて「保護犬たちの物語」を連載中。

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カテゴリ: 道ばた猫日記
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みにゃさまのコメント

おばあちゃん・お母さん・ミカコちゃんと動物好きな優しい心が受け継がれて、その分幸せになれる猫ちゃんがいる。地球上の人間が、こんな気持ちの人たちばかりだったら、みんな幸せになれるのに・・・きゅっと子猫を抱くミカコちゃんの優しい眼差しがとても素敵です。

by みゅうねこ 2014-07-15 13:38

赤ちゃんの頃からずっと猫が側にいるミカコちゃんが羨ましいです!
ミルクくんとココアくん可愛すぎる〜鼻のシミさえも可愛い♡
成猫ももちろんですが、子猫の可愛さったら・・悶絶ものです!
おかゆちゃんと早く仲良くなれますように〜

by akiko 2014-07-15 18:33

それから・・命をビニール袋に入れて捨てるって、人間のすることじゃないですね!
そんなことした輩はもはや人間じゃないですね!

by akiko 2014-07-15 18:40

>みゅうねこさん
>akikoさん

 ミカコちゃんくらいの年齢で、猫も同じいのちだということ、おなかもすくし、うんちもするってことを知るって大切なことですよね。猫はどんなものより大きなそのうちの財産だし、かけがえのない家族だと思います。

by 道ばた猫 2014-07-16 04:42

ミカコちゃん、可愛い兄弟が出来て良かった(^O^)なんてあどけない寝顔・・・。ミカコちゃんのお母さんの素早い決意に脱帽!!きっとミカコちゃんも小さな動物たちの命の大切さを忘れないでしょうね。
仲良く・・一緒に育っていってほしいです。

by りんりん 2014-07-20 09:58

>りんりんさん

「飼えない理由」よりも「飼える理由」を数えた、ミカコちゃんのお母さんは、素敵なおかあさんですね~!

by 道ばた猫 2014-07-21 00:21

なんてすてきなお母さん(^^♪
飼えない理由より飼える理を数えたお母さん!
空から足元に降ってきた猫さんたち(^^♪
ミカコちゃんとすくすく成長してね ~♪

by ruineko 2014-07-22 15:37

>ruiさん

 神様は、ゼッタイruiさんの足元めがけて子猫を降らせてますね~ ruiさんに元気でいてほしいから。

by 道ばた猫 2014-07-22 22:46