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[猫ブログ] いろいろな連載と、ときどきお知らせ。

道ばた猫日記

2014年07月08日

6番目の子

 母さんが玄関先やお庭に出ようとすると、ボクはいつも「ボクもお外に出る」ってねだるんだ。母さんに抱っこされてお外を眺めるのが大好きだし、大好きな母さんのそばにいつもいたいから。

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 「おいで」。そう言って母さんがやさしく手を差し伸べてくれると、ボクはあの日のことを思い出す。ボクがこのうちにもらわれてきた日のことを。ボクにとっては、やっともうどこにも行かなくていい自分のおうちになった「6番目の家」で、父さん母さんにとっては、ボクは6番目に迎える保護猫だった。

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 ボクたちノラきょうだいは、ちびっこの時にシェルターに保護されて、おうちが見つかるのを待っていた。きょうだいは次々とおうちが見つかっていくのに、ボクだけ見つからなかったのは、どうも鼻の周りの模様と、思いきり曲がった中途半端な長さのしっぽのせいらしい。譲渡会では、毛色もしっぽもスッキリした器量よしが人気なんだ。


 いつまでたっても里親が決まらないボクは、遠くの譲渡会にもはるばる出ることになって、預かり先を転々として、いろんな仮の名前で呼ばれた。一軒、二軒、三軒、四軒、五軒・・・。それでも決まらなかった。引っ越しは慣れっこになっちゃって、6軒目の家に移るときも、自分からキャリーケースに入ったんだ。

 6軒目のおうちに着いたとき。
「可愛い子だなあ」―― それが、父さんの第一声だった。
「ほんと」―― 母さんもニコニコして、「おいで、ここがお前のおうちよ」と手を差し出した。
「うちの6番目の子だから、お前の名前は今日からリュウだ!」と、父さんが言った。父さんはカメラマンだけど、書もやってて、「6」の中国語の読み方は「りゅう」なんだって。先輩猫たちは、みな、いろんな思いをした末にここの猫になったワケアリ揃いで、売れ残りだった新入りをすぐ受け入れてくれた。

 あれから、4年。いたいけな子猫だったボクは、いつのまにかお気楽な「どすこい」猫になって、日々笑いをふりまいている。お客さんが大好きで、ところ構わずごろんごろんしちゃうんだ。

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 このうちには猫好きのお客がなぜか多くて、ボクのチャームポイントをこぞって発見してくれるんだ。
「すてきなグレーの色!」
「幸せを招く、6の字のかぎしっぽね」
「なんて綺麗な黄緑の瞳」
「毎日見ても飽きなくていいね、こんなユニークな顔」
「足先の墨色の水玉模様がおしゃれ。子猫の時に硯の墨をいたずらしたのかな」
「体型から想像もつかないかわいいボーイソプラノ」
「顔を埋めたい!タプタプのおなか」
「性格よさそう」
 つまり、総合すると、ボクってすごーく味のある猫ってことだよね? ボクがほめられると「えー、そうかしら」って言いながら、母さんも嬉しそう。
 そうそう、「肉球がテディベア」っていうチャームポイントは、近所の小学生が発見してくれたの。

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 ボクの毛は、外側がグレーで、お腹が白くすぼまってるから、シャドー効果ってやつで、写真に撮ると、わりとフツーの体型に写るらしい。だけど、実際にボクに初めて会った人は、たいてい「うわ・・・」とか言って笑い出す。ボクが2階から下りてくると、「まあ、人が下りてきたかと思ったわ」って母さんは言うんだ。他の猫はあるかなきかの足音なのに、ボクは「ドス、ドス、ドスッ」って音がするらしい。きょう、父さんは、ボクの体重を量って「ややっ、リュウのやつ、8.6キロになってるぞ!!」って、大声をあげてた。

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 この前、ボクに会いに来た猫好きが言ってたけど、ボクみたいなのを「幸せ太り」って言うんだって。浦安の理容室でも、似たようなのを見たって(道ばた猫日記「幸せ太り」)。

 そう、ボクは「どすこい猫」なんかじゃなくて、見る人も幸せな気分にする「幸せ太り猫」なの。だから、父さんにこんな風に「アコーデオン!」っておもちゃにされたって、

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ときどき遊びに来る、ちびっ子のヤマトくんにお昼寝の枕にされたって、

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そのくらい、喜んで、大サービス。だって、エッヘン、何たってここは「ボクのおうち」で、ボクは父さん母さんの「自慢のコのひとり」だもんね!


写真

道ばた猫日記ライター紹介

佐竹 茉莉子(さたけまりこ)

フリーランスのライター。路地や漁村歩きが好き。町々で出会った猫たちと寄り添う人たちとの物語を文と写真で発信している。写真は自己流。著書に『猫との約束』『寄りそう猫』『猫だって……。』『里山の子、さっちゃん』など。朝日新聞WEBサイトsippoにて「猫のいる風景」、辰巳出版WEBサイト「コレカラ」にて「保護犬たちの物語」を連載中。

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カテゴリ: 道ばた猫日記
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みにゃさまのコメント

涙が出ます。いつも感動して読ませていただいてます。
ほんとリュウくん素敵なお父さんとお母さんに出会えてよかったね。

by りこ 2014-07-08 15:22

猫が語りかける読みやすい文章。。。3,4行読んだだけで道ばた猫さんの文章と見当つきました?

by クックロネコ 2014-07-08 21:42

お利口なりゅうくんが甘えられる場所が出来て本当に良かったですね。
いつも、必死な猫の姿に感動し、涙します。
幸せ太り、こちらも幸せになりますね。

by よこ☆ 2014-07-09 01:00

いつまでも 幸せにいてね

by くぅ にゃん 2014-07-09 06:19

道ばた猫さん、この間はぼくのうちに遊びに来てくれてありがとう。
たくさん写真撮ってもらって、ぼくうれしかったよ。
いっぱい、いい子だね、って言ってもらって、うれしかったよ。

それにぼくの気持ちこんなふうに、すてきに書いてくれて、ちょっとてれちゃうな。
幸せ太りのぼくだけど、お母さんに心配かけないように(糖尿になったら困るんだって)
少しダイエットもがんばるね。またあそびにきてね。

by リュウ 2014-07-09 08:05

リュウちゃん、ちゃーんとリュウちゃんのことわかってくれる人達のところへ来れて良かったね!
優しい顔立ちが倖せなんだな~、ってわかります。ホント!!幸せ太り~(^O^)いつまでも元気で
お父さんやお母さんと仲良くね!!

by りんりん 2014-07-09 09:44

>りこさん、クックロ猫さん、よこさん、くぅにゃんさん、りんりんさん

 りゅうくんの幸せ太りは、他の猫さんの食べ残しをいつもガッツリ食べているかららしいですよ(笑)。

by 道ばた猫 2014-07-09 10:17

>リュウくん

 この前は、たくさん写真のモデルになってくれてありがとう! うちにもね、譲渡会に出ても出ても売れ残ってた、硯に鼻先を突っ込んだような模様で、しっぽ曲りのケンジがいるんだよ。6歳だから、もうおっさんなんだけど、甘えん坊。リュウくんとおんなじ「愛い(うい)ヤツ」なんだ! また遊びに行くね。ダイエット、がんばってね。

by 道ばた猫 2014-07-09 10:26

素敵なお話に、ホロリときちゃいました。家は、2年前に20年生きた黒猫とお別れして、昨年シェルターの保護猫の里親になりました。1匹の予定が、私も連れて帰って攻撃の激しかった黒猫も(笑)現在、2匹と人間3人で暮らしてます。りゅう君の幸せをお祈りしてます。

by くっきー 2014-07-09 11:06

自分のほんとうの名前とほんとうのおうちをみつけることがリュウの夢でした。
夢がかなってよかったね! リュウ ♪

by ruineko 2014-07-09 12:04

おうちが5回も変わったんですね(/ _ ; )
可哀想で泣けてきます・・
本当に猫は健気ですね〜!静かに運命を受け入れるんですよね・・
でも今のおうちで幸せなのが伝わってきて、読んでるこちらも幸せな気持ちになりました!
これからもご家族からたくさんの愛情を受けて幸せでいてね〜

by 名無し 2014-07-09 20:12

一枚目の写真、お母さんのリュウくんを優しく包み込むように差し出された手と、そのお母さんを一心に見つめる、リュウ君のきらきらした瞳!愛し、愛されてる関係なのが、写真からとてもよく伝わってきました。リュウくん、君は本当に見る人も幸せにする、幸せ太り猫なのね!私もすっかり幸せな気分にさせてもらったよ。ありがとうね!

by ちぃこ 2014-07-09 20:58

とても良いお話に心がほっこりしました。
ありがとうございます。

by こまめ 2014-07-09 20:59

猫目線での語り口調、胸が詰まりました。。
転々と家も変わって、それが慣れてしまうって人でも辛いことです。
だけど今は幸せいっぱいのおうちに迎え入れられて、本当によかった。
これからもずっと幸せでいてください!

by さい 2014-07-09 22:50

>くっきーさん

 「私も連れて帰って」黒ねこさんの願いをきいてくださってありがとうございます! 2匹と3人、お 幸せに~

>名無しさん

 ほんとうに、猫はジタバタせず運命を受容して見事だと思います。だからこそ、一生を全うさせてやり たいですね、どの猫も。

>こまめさん
>さいさん

 リュウ君の気持ちになって書きましたが、きっとリュウくんはもっといろんなことを感じ、思っていることでしょう。ニンゲンが猫の気持ちをわかるというのは傲慢なことだと思いますが、だからこそ少しでもわかってあげたいと思うことこそ大切な気がします。

by 道ばた猫 2014-07-10 00:22

>ruinekoさん

 ほんとうの名前、ほんとうのおうちを知らないままに終わるいのちがまだまだたくさん。リュウくん  は、「希望」のシンボルです。

by 道ばた猫 2014-07-10 00:27

>ちぃこさん

 私もあの場面にリュウくんの物語が凝縮されていると、心がふるえました。それで、1枚目にもってき たのです。伝わって、嬉しいです!! 

by 道ばた猫 2014-07-10 00:31

なんて素敵な柄なんでしょう。可愛すぎてもふもふのお腹に顔をうずめたいです。

by ゆこゆこ 2014-07-10 10:17

>ゆこゆこさん

 リュウくんは、お腹をモフモフされるの大好きです。それから、父さんに足でモフモフされると、感に耐えぬような「キュ、キュッ」って声をあげて喜びます。画像的には虐待っぽく(笑)映るのでアップをひかえましたが~

by 道ばた猫 2014-07-10 11:45

道ばた猫さん、こんにちは。初めてコメントします。
リュウくんの物語、猫目線で気持ちが伝わってきて感動しました♥幸せになって本当に良かったですね。
リュウくんには一度会ったことがありますが、とてもフレンドリーでした(^^)
ダイエットが無事成功して、これからもずっと幸せでありますように♪

by ふくろうみー 2014-07-10 16:16

>ふくろみーさん

 リュウくんに会ったことがあるのですね! からだは大きいけど、おっとりで、フレンドリーで、甘えんぼで、いかにも末っ子って感じの猫さんですよね~

by 道ばた猫 2014-07-10 21:26

リュウくん、素敵なおうちでよかったね♪
水玉模様にテディベアに、沢山のいいところを見つけてもらえるのは、
リュウくんがフレンドリーだからだね(^o^)

by りょう 2014-07-14 10:44

>りょうさん

 皆さまにエール・コメントいただいて、リュウ君、さらに「エッヘン」って感じらしいですよ(笑)~

by 道ばた猫 2014-07-14 20:33